抄録
極めてまれな両肘関節重度熱圧損傷の治療経験を報告する.症例は29才,男性.労災事故で受傷.両肘前面中心にそれぞれ体表面積の2%の広さで羊皮紙様で両手は知覚脱失で運動麻痺であった.緊急切開減圧手術受けるも壊死が進行し,左前腕以遠は壊死に陥り前腕切断ならびに肘関節露出状態となった.右上肢も前腕屈筋群切除,正中,尺骨神経切除,尺骨動脈切除,肘関節露出状態で受傷2.5か月後に当院転院となった.左肘は同側広背筋皮弁で被覆再建した.右上肢は上腕部で下尺側側副動脈茎の血管柄付き尺骨神経を挙上して前腕へ移行し正中神経を架橋修復後,同側の広背筋皮弁で被覆再建した.追加手術を要したが創治癒ならびに両肘関節の機能温存が得られた.右上肢は遊離薄筋皮弁移植で手指屈曲再建し,受傷後2.5年で右手正中神経領域は知覚回復し,手指屈曲可能となった.左は電動義手装着しスプーンでの摂食動作などが可能である.