抄録
76歳,女性.主訴は右肘の可動域制限による食事や洗髪,洗顔の障害である.30歳代で関節リウマチ(RA)を発症し,60歳時に屈曲70度で強直した.受診時,RAの疾患活動性は寛解しており,両下肢,脊椎に重度の障害はなかった.利き手の右上肢は,肩関節に可動域制限はなく,肘関節は70度で強直,手関節は中間位で強直,示指から小指のMP関節は尺側偏位変形していた.Linked Typeの人工肘関節全置換術(TEA)を行った.術後1年10か月,右肘の可動域は改善し,食事,洗髪,洗顔も可能となり,患者満足度は高く経過良好である.本症例では16年間に及ぶ肘関節強直で肘関節痛はなかった.しかし,両上肢の関節破壊による患者のADL障害が重度で,手術に対する強い意欲があった。さらに術前の等尺性運動において上腕二頭筋と上腕三頭筋に強い収縮を認めたことから,TEAを施行し,良好な成績を得た.