2021 年 28 巻 2 号 p. 80-83
16 歳,男性.階段から転倒し,受傷後12 週にMRIで上腕三頭筋腱皮下断裂を指摘された.左肘頭近位に陥凹を触知し,単純X線とCTで上腕骨遠位後方に裂離骨片を認めた.上肢機能評価(QuickDASH-JSSH)は15.9 点,スポーツ93.8 点と障害の程度が強く,受傷後15 週で手術を行った.上腕三頭筋腱は肘頭停止部と3 cmの間隙があり,肘頭に仮縫合したところ肘関節は90 度以上屈曲が不能となったため腱移植を選択した.大腿筋膜張筋を用い肘頭と面で接触するようにパッチ状に移植した.術後40 週でQuickDASH-JSSH 0 点,スポーツ6.25 点と機能評価は改善し,日常生活およびスポーツ活動に支障はなかった.大腿筋膜張筋を再建材料として,肘頭にパッチ状に縫合した後に上腕三頭筋の緊張度を確認しながら移植長を設定することで良好な結果が得られた.