2022 年 29 巻 2 号 p. 182-185
野球選手の肘関節尺側側副靱帯(UCL)損傷に対し,長掌筋腱を用い尺骨・上腕骨の両側をスーチャーアンカーで固定するUCL再建術を行い臨床成績を調査した.対象は全例男性,36例36肘,手術時年齢は平均19.4歳,投手27例,捕手4例,野手5例で,術後経過観察期間は平均18.5ヶ月であった.手術はUCL前方線維上のFDSの剥離とUCLレムナントの尺骨側の剥離を最小限とし,尺骨側は鉤状結節部に1つの浅い骨孔,上腕骨側は内側上顆を貫通する骨孔を空け,両側をスーチャーアンカーで縫着した.全例が平均10.2ヶ月で野球競技復帰を果たし,Conway-Jobe ratingはexcellent:29例,good:5 例,fair:1例であった.JOA-JESスポーツスコアは術前46.1点から術後93.4点に有意に改善した.本法はUCLレムナントを温存でき簡便にUCL再建できる有用な方法と思われた.