2023 年 30 巻 2 号 p. 392-397
遠位橈尺関節障害に対しSauvSauvé-Kapandji法術後に橈骨頭の前方偏位を生じた1例-Kapandji法(以下,SK法)を施行した患者の中には肘関節に愁訴を有する症例がある.今回,SK法術後の肘関節X線で橈骨頭の前方偏位を認めた1例について報告する.症例 74歳男性.遠位橈尺関節症に対するSK法であり,術前の肘関節X線では橈骨頭のアライメント異常は認めていなかった.術後1年11か月で軽度の肘関節痛を自覚したが,この時点でもアライメント異常はなかった.術後2年半で橈骨頭の前方偏位が生じはじめ,最終的には上腕骨小頭の50%前方にまで偏位していた.尺骨近位断端(以下,ulnar stump)には不安定性を認めていた.橈骨頭の前方偏位の原因として,①ulnar stumpの不安定性,②骨間膜の機能不全,③腕橈関節の負荷増大と滑膜炎による関節弛緩が考えられた