看護の技術において体位変換は,身体に直接触れる行為を伴い,かつ,すべての安楽ケアを成立させるのに必要な基礎的な技術の一つである.一方で,症状や障害をもつ患者の変化する状況に合わせて実践しなければならない応用的な技術でもある.患者に合わせて体位変換を実践することが求められるとき,どのような情報を利用しながら看護師は体位変換をしているのか.人との直接的なかかわりとそこに存在する環境とのかかわりあいの中から,看護師の知覚と行為を見出すには,アフォーダンスの観点が参考になるのではないかと考えた.そこで本研究は,以下の実験を行った.模擬患者団体の70 歳代男性1 名に,『右麻痺のある患者がベッド上に左向きで横になってテレビを2 時間見た後に,同じ姿勢が辛くなったためナースコールを押す』という場面を演じてもらい,看護師2 名にそのナースコール対応を3 日連続で行うという設定で,体位変換を実施してもらった.その場面をビデオカメラ2 台で撮影し,その映像から,看護師が行う体位変換を構成している知覚と行為を解析した.