生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
日本生態心理学会第10 回大会 予稿
シンポジウム徹底討論 エコロジカル・アプローチとエナクティヴ・アプローチの近くて遠い関係
染谷 昌義吉田 正俊廣田 隆造
著者情報
ジャーナル フリー

2026 年 18 巻 1 号 p. 5-9

詳細
抄録

 本シンポジウムでは,心のはたらきに対する二つの研究プログラムであるエコロジカル・アプローチとエナクティヴ・アプローチの共通点・相違点,ならびに協働と相補の可能性を検討し,今後の議論の端緒を開くことを目的とする.エナクティブ・アプローチ側から吉田正俊(神経科学),廣田隆造(身体性認知科学)が提題発表を行い,それに対し染谷昌義(生態心理学・哲学)が議論を仕掛ける構成でシンポジウムを進行する.

 二つのアプローチは,知覚認知の反表象主義,知覚認知において身体行為が果たす役割の強調,生物主体と環境との動的な関係調整としての認知観といった点は共通しており,認知主義的な心の理解に対し一貫して反対してきた.他方,両者は30年近く前から対立もしている.1991年の誕生当時,エナクティヴ陣営は,エコロジカル陣営が脳や神経系の仕組みをほとんど重視していないと批判した.逆に,エコロジカル陣営は,エナクティヴ陣営が生態学的環境や刺激情報に十分な注意を払っていないのではないかという不満があったと考えられる.ところが,最近になって海外の研究では,二つのアプローチの違いを認めつつも,互いのセールスポイントを結びつけ補おうとする動きが始まった.このシンポジウムでは,こうした最新の動向や課題について報告し,さらに議論を深める場としたい.特に本邦にてエナクティヴ・アプローチを専門とする吉田正俊氏と廣田隆造氏に登壇してもらい,エコロジカル・アプローチとエナクティヴ・アプローチの近さと遠さについて集中的に議論する.

 吉田正俊氏には,エナクティヴ・アプローチの本質,最も重要なポイントと魅力,エコロジカル・アプローチとの異同を指摘してもらい,協働の可能性を考えるための材料を提供していただく.廣田隆造氏は,エコロジカル・アプローチの重要概念であるアフォーダンスをエナクティヴな観点から捉え,数学における圏論を用いアフォーダンスの関係的性格と資源的性格が両立可能であるという主張を展開していただく.染谷昌義は,シンポジウムの最初に二つのアプローチの論争点と現況を手短に報告し,個別の提題はせず,エコロジカル・アプローチ側からのディスカスタントとして質疑を行う.

著者関連情報
© 日本生態心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top