日本の多くの地域で行われてきた乳幼児をおんぶすることは, 運搬のみならずあやしやなぐさめなどの保育の要素も含んだ, 労働と子育てを両立できる方法である. 近年では背中でのおんぶではなく体の前面で抱く親子が増えてきた. 母子が抱き合うとお互いが環境となり,子守帯を使えば更にそれを布や紐が取り巻く幾重もの入れ子状になる.本研究では母と子が子守帯を用いて抱いた状態で歩行や動作課題を行い,母のふるまいの差を検討した.子守帯には多様な種類があるが,あらかじめ道具としての構造を設計されたベルト付き抱っこひもと布を母子に巻き付けることで密着を安定させる布製抱っこひもを用いた.歩行では母が装着した抱っこひもによって姿勢が変化することで,腕の動作への制約に影響を及ぼした.動作課題では子の安定性と子の相対位置により母の課題遂行動作に違いが見られた.