生態心理学研究
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9 巻 , 1 号
生態心理学研究
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
小特集 インフォメーションのリアル
日本生態心理学会第6回研究大会 予稿(2016 年9 月3-4 日開催 北海学園大学)
口頭発表
  • 西尾 千尋
    2016 年 9 巻 1 号 p. 17-18
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    本研究では 2 名の乳児(女児A, 男児B)について生後約 10 ヶ月から歩行開始後 3 ヶ月が経過するまでの間,月 2 回約 1 時間の観察を行い,移動手段(ハイハイ,つたい歩き,歩行,その他)と滞在中の姿勢(座位,四つ這い,しゃがみ,立位)について分類を行った.その上で,移動手段の変化を A B それぞれについて各観察日における移動手段の合計時間で示し,さらにひとつの移動の終わり方についての分類を,Cole ら(2016)を参照して行った.2 名ともに歩行を開始した後はハイハイがほぼ見られなくなり,移動合計時間がそれまでに比較して大幅に増加した.両者ともに家族,物,家具や部屋の構造体といった目的地に到達する移動が移動の停止,同じ場所内での移動,転倒,抱き上げられる等の目的地のない移動を上回った.

  • 園田 正世
    2016 年 9 巻 1 号 p. 19-21
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    日本の多くの地域で行われてきた乳幼児をおんぶすることは, 運搬のみならずあやしやなぐさめなどの保育の要素も含んだ, 労働と子育てを両立できる方法である. 近年では背中でのおんぶではなく体の前面で抱く親子が増えてきた. 母子が抱き合うとお互いが環境となり,子守帯を使えば更にそれを布や紐が取り巻く幾重もの入れ子状になる.本研究では母と子が子守帯を用いて抱いた状態で歩行や動作課題を行い,母のふるまいの差を検討した.子守帯には多様な種類があるが,あらかじめ道具としての構造を設計されたベルト付き抱っこひもと布を母子に巻き付けることで密着を安定させる布製抱っこひもを用いた.歩行では母が装着した抱っこひもによって姿勢が変化することで,腕の動作への制約に影響を及ぼした.動作課題では子の安定性と子の相対位置により母の課題遂行動作に違いが見られた.

  • 山本 尚樹
    2016 年 9 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    1 名の乳児を対象に,寝返りを始めてから四つ這いの移動を始まるまでの発達プロセスを縦断的に観察した.寝返りをした後の腹臥位に見られる運動パターンを質的に記述し,寝返りの始まった 5 ヶ月後半から四つ這いでの移動の始まる 8 ヶ月後半まで,約 2 週間ごとに運動パターンのヴァリエーションの特徴をまとめていった.結果,様々な運動のヴァリエーションが分岐,部分的に合流しながら現れていき,それらが合流していくことで四つ這いでの移動が始まっていたことが示された.この結果は,ヴァリエーションが運動発達に関わることを具体的に示すものと考えられる.

  • 野澤 光
    2016 年 9 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    本稿ではケーススタディとして,書道熟達者 1 名が 16 回の試行を経て臨書を制作する過程を,書家の運動協調の縦断的変化に焦点を当てて分析した.書家の頭部の水平面の旋回周期を再帰定量化解析(Recurrence Quantitative Analysis)により評価した結果,特定の試行数と,特定の紙面位置において,旋回周期は高い再帰性を示していた.このことは,書家の身体システムが,試行を通じて平均的に底上げされるかたちで発達するのではなく,特定の描画シーンにおいて,異なる協調関係を実現している可能性を示唆している.

  • 辻田 勝吉, 後安 美紀, 岡﨑 乾二郎
    2016 年 9 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    本研究では,人間と協働して絵を描くロボットシステムを用いて,自己主体感および自己所有感発現のメカニズムを調べることを目的とする.本研究では,描画行為は主体と媒体との相対運動の中で生じるものだと考えている.具体的には,ロボットがペンを保持したアームを可動させるのではなく,ロボット上部に設置された画板を実際の描画方向とは逆に可動させることで描画を行う.本描画ロボットを用いた実験を通して,人間がペン先に伝わる触覚のみによって,過去の自分の描画運動パターンを想起し,再現できるか否かを検討した.その結果,ペン先の触覚のみによる運動知覚によって,画像刺激による想起と同等の線画の形態的特徴の再現能力と,線画の局所的な特徴点近傍では,むしろ視覚想起条件よりも優れた再現能力が発現することが確認された.

  • 沢田 護, 大山 宏, 山下 晃一, 中島 章徳, 中川 雄樹, 和田 陽介, 冨田 昌夫, 三嶋 博之
    2016 年 9 巻 1 号 p. 35-36
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    筆者らは、2012 年第 2 回生態心理学とリハビリテーションの融合研究会において、身体に快適で動きやすい音場空間に関するデモンストレーションを実施した。この内容は、背臥位安静時の被験者の両サイドに空気振動を拡散反射する部材を設置し、被験者の筋緊張の度合いを実験協力者が揺すりによって確認することであった.その結果,殆どの被験者は拡散反射部材を置くと筋緊張が緩和した.本研究では,臍部に装着した加速度センサを使用して呼吸の質を分析し,人を取り巻く空気振動環境が人の呼吸活動に影響を与える事例を示す.

  • 伊藤 精英, 沢田 護, 三嶋 博之
    2016 年 9 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    空気流動を利用して物体の形状を知覚できることを明らかにするために実験を行った.予備実験では扇風機を利用して空気流動を起こし,空気の動きを遮断する物体の形状により空気流動がどのように変化するかを検討した.その結果,遮蔽する物体由来のうなりが生じることが示唆された.そこで,うなりを振動発生機から出力して空気振動を発生させ,遮蔽物による振動の変化を分析した.その結果,遮蔽物の形状に特有の波形及びスペクトル構造を得た.物体の形状の違いによる振動の差異を触覚によって弁別できるかを検討した結果,チャンスレベル以上の確率で形状由来の振動パターンを弁別することができた.本報告では,空気振動配列の構造が光学的配列と同様に物体表面の状態を反映するテクスチャーであることについて言及する.

  • 佐藤 由紀, 青山 慶, 佐々木 正人
    2016 年 9 巻 1 号 p. 41-43
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    俳優という職業における中心的技術の一つは,“不在の環境(佐藤, 2004, 2006)”の現出である(ブルック, 1993).それは,紙上に書かれたテキストを俳優の身体というメディアによって“行動を現在化(グイエ, 1976)”することでもある.そこで本研究では,プロの俳優 2 名に一人芝居の上演戯曲を基に,40 時間(4 時間/×10 日間)の稽古で演技を組み立てるよう依頼し,その稽古過程を観察および分析した.

  • 長谷川 愼哉, 吉田 彩乃, 伊藤 精英, 櫻沢 繁
    2016 年 9 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    繊細な物に触ろうとするとき,指の生理的振戦が心理的要因と無関係に変化することが知られている.このような生理的振戦は,触知覚において何らかの機能を持っている可能性がある.そこで本研究では,柔らかい物を指で触れ,柔らかさを触知覚するとき,筋の電気生理的な活動から振戦の生成因を明らかにすることを目的とした.その結果,柔らかい物に触れている時,指関節の運動に寄与する拮抗筋のスパイク状の活動が大きかった.これらの実験事実より,柔らかい物に触れている時の生理的振戦は,加えた力に対する指の動きによる筋紡錘-脊髄反射系から引き起こされていると考えられる.

  • 佐古 仁志
    2016 年 9 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    本発表の目的は,インゴルドの「徒歩旅行」と「輸送」という移動の区別を引き受けたうえで,諸々の移動研究を参照することで,それらの移動に伴う知,つまりは<移動知>がどのように身体化されるのかを考察することにある.まず「徒歩旅行」と「輸送」の区別を明確にし,それからそのような区別と接続可能な身体性認知科学についての検討を行なう.そのうえで,「モビリティ」に関する研究を参照することで,さまざまな移動に伴う実践および知識,すなわち<移動知>がどのように身体化されているのかについて考察する.また,このような<移動知>の身体化の考察からは,移動形式のもたらす「自己」への影響が明らかになると思われる.「徒歩旅行」という形式の移動研究は,地図に依存することなく,むしろ物語(境界・俯瞰的ではない地図)の創出を通じて影響を与える点で,そして「輸送」という形式の移動研究は,「モビリティ」研究を媒介にし,社会性をもたらす点で,「自己」の形成に重要な役目を果たすということが提示されることになるだろう.

  • 工藤 和俊, 鳥越 亮, 根本 真和, 進矢 正宏, 沢田 護, 三嶋 博之
    2016 年 9 巻 1 号 p. 52-53
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    本研究では,自動車運転による間隙通過の際の注視点計測を行うことにより,運転時の視覚-運動協調について検討した.実験では7名の参加者が乗用車を運転して100m 先の障害物(パイロン)間を通過する間隙通過課題を行った.この際の注視点をアイマークレコーダーを用いて計測した.また,車両幅の知覚における個人差を明らかにするため,静止した車両の前方に置かれたパイロン位置を車両の左右端に合わせる車両幅知覚課題を行った.その結果,知覚課題における誤差(実際の車両幅と知覚された車両幅の差)と間隙通過課題時の障害物注視確率との間に正の中程度の相関が認められた.この結果は,車両幅知覚の誤差が小さかった参加者は運転時に進行方向である間隙中心を注視していた一方で,車両幅を過大に知覚していた参加者は障害物を注視することによって車両の接触可能性を確認するという注視行動が生じていたことを示唆している.これらの注視パターンはそれぞれ,目標方向への移動および障害物の回避課題において典型的に認められることから,自動車運転による間隙通過時の注視行動は拡張された身体である車両の行為可能性を反映していると考えられる.

  • 三嶋 博之, 沢田 護
    2016 年 9 巻 1 号 p. 54-55
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    熟練ドライバーが生成する光学的流動と,非-熟練ドライバーが生成する光学的流動を,それぞれ動画としてディスプレイ上に提示し,それらを観察する実験参加者の注視点分布を視線計測装置により記録した.分析の結果,熟練ドライバーが生成する光学的流動(熟練ドライバーが運転する車両のビデオカメラによって撮影された走行時の前方風景の動画)を提示した場合には,非-熟練ドライバーの動画(熟練ドライバーと同様の方法で撮影)を提示した場合に比べて,それを観察する実験参加者の注視点はより遠位かつ左右に広がって分布することが確認された.一方,非-熟練ドライバーの走行時前方風景の動画再生速度を単に上昇させた場合には,注視点の分布は全体的に遠位にシフトするものの,遠位で左右に広がることはなかった.これらの結果から,熟練ドライバーが生成する光学的流動には,注視点を遠位左右(道路上のコーナー出口など)に向けて誘導する固有の構造──情報──が含まれている可能性について議論される.

ポスター発表
  • 玉垣 努
    2016 年 9 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    本研究では,ダイナミックタッチの知覚およびリモートタッチの知覚に麻痺が与える影響について検討した.頸髄損傷者 5 名と健常者 6 名を対象に,視覚的に遮蔽された状態で,道具の長さと,その道具を打ち付けた接触面までの距離について知覚判断させた.分散分析から,健常者では,道具の長さと長さのタスクおよび接触面までの距離と距離のタスクにおいて単純主効果が有意であった.しかし頸髄損傷者では,道具の長さと距離のタスクにおいても有意な単純主効果が生じていた.このことは,タスクに関係する性質を選択的に知覚する能力が,神経障害の有無に影響を受けることを示唆する.

  • 廣瀬 直哉
    2016 年 9 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,マイクロスリップとアクションスリップを統一的に記述・分類し,両者の相違点について検討することであった.そのため,スリップを含む行為を動作系列として記述する方法を提案した.また,その記述方法を使って記述したスリップを修復モデルの 3 つの観点(修復対象,非流暢,修復)からタイプ分けした.さらに,マイクロスリップとアクションスリップを統一的に記述・分類することで明らかになった両者の相違点についても検討した.その結果,マイクロスリップは単にアクションスリップがマイクロなレベルで生じているだけではなく,両者には本質的な違いがあることが推察された.

学会報告
  • 藤田 雄人
    2016 年 9 巻 1 号 p. 67-69
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー

    18 回知覚と行為に関する国際会議の参加報告として,本稿にて発表した研究を紹介する.この研究では,人間の視覚性運動制御に予期による行為が利用されているかを調査した.地面に対して水平なレール上を転がる鉄球を制御する課題を用いて実験を行った.制御システムには被験者の操作が反映されるまでに遅延を設定し,視覚情報の遅れを実現した.計測した操作と鉄球の位置との相互相関解析から,操作が鉄球の運動に追従するフィードバック制御であることがわかった.そして,制御対象に対する操作の遅れはシステムの遅延に依存せず一定であった.被験者は操作を行う中で,システムに遅延があることを認識していた.しかし,相関解析の結果に被験者が鉄球の運動を予期して鉄球の運動よりも先に操作を行う傾向は見られなかった.このことは人間の視覚性運動制御が軌道計算の予期によるフィードフォワード制御ではないこと示唆し,運動制御が制御モデルで与えられるような認識‐運動過程ではなく,運動調整に対する生態心理学的なアプローチを支持する結果である.

  • 野中 哲士
    2016 年 9 巻 1 号 p. 70
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2021/01/27
    ジャーナル フリー
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