2016 年 9 巻 1 号 p. 26-30
本稿ではケーススタディとして,書道熟達者 1 名が 16 回の試行を経て臨書を制作する過程を,書家の運動協調の縦断的変化に焦点を当てて分析した.書家の頭部の水平面の旋回周期を再帰定量化解析(Recurrence Quantitative Analysis)により評価した結果,特定の試行数と,特定の紙面位置において,旋回周期は高い再帰性を示していた.このことは,書家の身体システムが,試行を通じて平均的に底上げされるかたちで発達するのではなく,特定の描画シーンにおいて,異なる協調関係を実現している可能性を示唆している.