2024 年 100 巻 p. 13-24
本稿では,機関誌『社会科研究』の第26号から第50号のレビューについて,まず本学会の学会としての成立と展開を支えてきた歴代理事長・会長の研究の歩みから時期区分を行った。この時期区分に即して学術研究の萌芽と展開を明らかにすることを通して,社会科に関する研究動向の軸を見定めることを目的に考察と検討を進めた。その結果,第26号から第50号までの時期は,社会科に関する学術研究の進展が着実に進み,その研究対象や研究方法の拡大と深化も堅調に推移してきたことが改めて確認できたが,その一方で学校教育の中での社会科は制度的に解体の経験を伴う時期に差し掛かっていた。学校現場における社会科が直面する現実と,学会での学術研究での社会科に関する理想を追い求める動向との乖離が大きくなり始めたのが,本稿で対象とした論考の時期でもあったと位置づけられる。学会の成立と研究の進展に伴い,学校現場の現実と学術の場での理想との間で,社会科が相生と共に相剋への関係へと踏み込んでいくことになるのが,本時期の動向の一つの表象であると結論づけることができる。