社会科研究
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全米社会科協議会におけるPASSの構造と特質 : 社会問題学習を基盤とした教員研修プログラム
渡邉 巧
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2015 年 83 巻 p. 25-36

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抄録
本稿では,全米社会科協議会(NCSS)が提供する社会科教員研修プログラムのPASSを取り上げる。PASSは,社会科教師にどのような資質・能力を論理的に形成しうるのか。なぜ,そのような構造のプログラムとして成立しているのか。これらの問いを検討した。結果,以下の2点が明らかになった。第1に,本プログラムは,異なる社会科の考え方の合意点の上に成立していた。その合意点が,「パワフルかつオーセンティック」という社会科観であった。具体的には,単元の次元で社会問題学習を実現していくことを意味していた。これによって,PASSは,理想(公的論争問題学習)を持ちつつも,広く社会科を捉えることで,多くの教師のニーズに応えられる柔軟な研修プログラムとして設計されていた。第2に,本プログラムは,実践例や参加者が開発したプランの分析を方法原理とした研修をおこなっていくことで,教師自身に自己省察を促すものとなっていた。これによって,社会科教師の「授業計画力,授業実践力,授業評価力,授業改善・再構成力」の育成に寄与することが可能な構造になっていた。このような特質によって,PASSは,汎用性の高い社会科教員研修プログラムとして成立している。以上は,学会や地方自治体が提供する研修プログラムのあり方として,有益な示唆を提示しているのではないだろうか。
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© 2015 全国社会科教育学会
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