社会科研究
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日独歴史意識研究の比較考察 ― 歴史教育学研究における教育目的概念に焦点化して ―
宇都宮 明子
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2016 年 85 巻 p. 13-24

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抄録

 本稿では,日本とドイツの歴史意識研究を比較考察する。本稿での分析から,日本の歴史意識研究は歴史意識の3つの側面ごとの調査から歴史意識の発達段階の論理と歴史授業で獲得した歴史認識を通して変動する歴史意識の成長の論理を導き出していること,ドイツの歴史意識研究は歴史意識の要素から歴史意識の次元を解明するとともに,その次元を検証することで歴史意識を構造化していることを究明した。

 この特徴から,日本は歴史意識を発達心理学上の方法手段概念と位置づけて歴史認識から歴史意識が形成される,ドイツは歴史意識を教育目的概念と位置づけて歴史意識から歴史認識が形成されるとして両者の関係性を捉えていることが分かる。この関係性の相違から,日本では歴史認識,ドイツでは歴史意識が中心的カテゴリーとなったと考えられる。ドイツの歴史教育学では歴史意識が中心的カテゴリーとなって以降,コンピテンス志向,構成主義といった鍵概念のもとで発展がもたらされており,教育目的概念の設定が歴史教育学研究の発展の鍵となっている。日本においても歴史的分野独自の教育目的概念として歴史意識を設定することが,歴史教育学研究の発展のためには不可欠と考えられる。

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© 2016 全国社会科教育学会
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