2016 年 85 巻 p. 37-48
本研究の目的は,小学校社会科防災単元に科学技術社会論(STS)の研究成果を取り入れる必要性を示し,単元構成方法を明らかにすることである。
防災・減災の実現は,科学・技術だけで解決することが困難な問題(トランス・サイエンスな問題)である。したがって,社会科防災単元においても自然災害をトランス・サイエンスな問題として位置づけ,STS の成果を踏まえた単元を構成する必要がある。本稿では,小学校社会科防災単元にSTS の成果を取り入れる意義を,①公共的ガバナンスを担う存在としての市民の育成,②学際的なアプローチによる多面的・多角的に社会を見る力の育成,③科学・技術の在り方を問う力の育成,という三つの点から示した。
そして,岩手県宮古市田老地区と宮城県気仙沼市唐桑町鮪立地区を事例として,STS の成果を踏まえた単元を開発した。授業のプロトコルやノート記述をもとに子どもの思考を分析・考察し,STS の成果を踏まえることの意義を明らかにした。