2020 年 20 巻 01 号 p. 336-350
本研究は,熟達期の小学校教師を対象に,授業の参与観察ならびに事後検討会を実施し,教師の信念と音声指導が変容していく過程を質的に検討した。授業者が持つ「オープン・マインド」「英語が苦手な児童や分からない児童にも寄り添いたい」などの信念や,日付の/th/をはじめ,特に児童が聞いたり話したりすることが多い音声的特徴に焦点をあてた指導,「明示的な発音指導」や「児童への教師の観察の促し」などは一貫していた。一方,語や文の強勢に関する「明示的な発音指導」や,「つまずきへの共感」が顕著に観察された。また,児童の英語音声に対する気づきやつまずきに価値を見出し,全体で共有しようとすることで授業改善に結びつけるという変容が明らかになった。その背景には,新任ALT と協働関係を構築する中で,「中学校の指導との整合性」がより焦点化されたという心的変化がうかがえ,このことは省察における積み重ねや「できること」「分かること」への言及と,「明示的な発音指導」や「音と文字との対応」などの発話に顕著に表れていた。