2020 年 20 巻 01 号 p. 351-366
本研究の目的は,小学校英語教育学会紀要 JES Journal 第3 号から第19 号(2003–2019 年)までの掲載論文をシステマティックレビューによって分析し,ボトムアップ型視点では見ることができなかった研究の全容から,小学校英語の研究動向と研究方法を検証することである。分析対象は,J-STAGEにアップロードされている JES Journal 第3 号から第18 号(2003–2018 年)までの論文(k = 175)と第19 号に掲載されている論文(k = 14)とする。本研究では,まず,システマティックレビューを実施し,研究分野の多様性や研究構造(理論・文献・実証・実践)の集中化の状況を検証する。次に,これまでの学習指導要領の改訂における研究動向を検討するため,データの属性からキーワードを時系列的に概観する。さらに,藤田他 (2016) を参照し,抽出した実践研究をテーマと研究方法の観点から分析し,学会 (JES) の研究活動の特徴を把握する。研究論文における研究方法は広がりを見せているが,研究分野ごとに多様であり,変容著しい小学校英語の状況において研究動向が変化していることが示唆された。実践研究では教員の実践知に係わるテーマが多く見受けられるとともに,研究方法の確立と整備が課題であることが確認された。本研究では,ジャーナル論文に含まれる属性に対して解析を行い,研究活動の実態を分析した。研究アウトプットに基づくため,論文では測れない研究活動の成果は反映されないが,学会における研究状況を把握し,ジャーナル論文の分析結果を報告する。