林業経済研究
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中国華北平原地域における「農用林業」進展の要因とその問題点(自由論題論文,1994年秋季大会)
李 天送
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1995 年 1995 巻 127 号 p. 173-178

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抄録

現下の中国林業では,衰退している国有林地域及び南方森林地域と林業の進展している平原地域とに大別できる。森林資源の枯渇に直面している国有林地域・南方森林地域と比べて,「農用林業」の形で順調に進展してきた華北平原林業は,いわばその対極に位置する活発な地域といってよい。華北地域の農用林業は,社会主義中国の成立の初期に,農地耕作環境の改善・食料生産の安定という目的から出発して,国の行政主導のもとで大規模な造林運動が行われたのを発端としたものである。それに加え,長期間にわたる自由木材市場の存在,高木材価格と特恵的な税制の推移,人口の増加による土地に対する有効な利用,及び農村経済改革に入ってからの農家の土地経営権と林木所有権の獲得等を要因として,農用林業は大きな進展を見せ,耕作環境改善効果を発揮するとともに,農家にも多大な経済利益をもたらした。しかし,土地制度,農村経済構造が転換期に当たり,さらに激動している中国近代化政策の下で,1980年代末期以降,土地経営の零細化と土地使用権の変動,地域内の木材価格の下落,助成の不足と行政的干渉等によって,農用林業の進展をもたらした諸条件は失われつつある。

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© 1995 林業経済学会
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