抄録
1960年代以降の国内製材業について,利用する素材に注目しつつ,その展開をあとづけ,以下の各点を明らかにした。①国内製材業は,外材が浸透する過程で,よりよい条件で必要量の確保が見込める樹種を導入し,その樹種の性格に合致した生産品目へと傾斜していった。これにより,利用樹種と生産品目の両面で特色をもつ外材製材産地が各地に形成された。その後,規模拡大などによって高い競争力を獲得した産地のみが集積度を高め,利用樹種・生産品目ごとに,地域間分業もしくは棲み分けというべき構造が生じた。②利用樹種・生産品目・工場立地間の適合性は競争力に直結するため,企業にとって原料転換は技術的対応以上の負担となるが,それが行われる場合,代替樹種でも既存主力品目の生産を続行しようとする傾向がみられる。③2000年代以降,外材製材による国産材の導入が進んでいるが,これにより,特定樹種の利用を前提として構築・強化されてきた各産地の優位性は薄れつつある。他方,国産材製材には,外材製材の縮小や人工林資源の成熟化などを背景に生産品目や立地を拡大する動きがみられる。このように,今日の製材業は,原木事情の変化に起因する再編の兆しがみえる。