林業経済研究
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落葉採集林をめぐる森林・土地政策の変遷と地域住民の慣習的な管理・利用
ブータン・プナカ県の事例より
原田 一宏 長谷川 真弥グルン ラタンカテル オム
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2021 年 67 巻 3 号 p. 11-23

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抄録

本研究は,ブータンにおける落葉採集林に関する法制度の変遷や,地域住民による落葉・採集林の法制度に対する認識や意見,管理や利用の実態を把握することを目的とする。1959年以前は,国としての森林管理に関する法制度はなく,地域住民は落葉採集林を自由に管理・利用していたが,1959年に法制度が整備され,その法的位置づけが変容した。特に,2007年の土地法では,今まで地域住民に認められていた落葉採集林の利用権がはく奪され,それに代わって,地域住民が落葉採集林を賃貸林として賃貸する制度が導入された。しかし,西ブータンの調査対象村では,政府による法執行能力が低いために,法に基づく落葉採集林管理は実践されておらず,落葉採集林に関する法制度制定から60年以上を経た現在でも,地域住民は以前と変わらず慣習的に落葉採集林を管理・利用していた。法制度が十分に機能していない中,落葉採集林の管理・利用における慣習の強さが村落間や村落内の住民の間で異なり,今までの慣習的管理や利用が今後も存続していけるという保証はない。政府が森林保全を実現するためにも,住民が安心して落葉採集林を利用するためにも,政府は現行の法制度をどのように現場に即した形で実践していくかを検討していく必要がある。

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