抄録
本研究は,国産材の主要な用途の製材用材を対象に栃木県高原林業地において,森林所有者から製品市場までの木材流通における売り方と買い方の有する情報の非対称性の把握を目的とした。高原林業地は関東平野北部に位置し,大規模製材工場が立地し,2013年より栃木県森林組合連合会と製材工場間で協定取引が行われている。研究手法として木材流通における各事業者間での情報の非対称性に関する聞き取り調査を2018年4月~2020年2月の間に行った。その結果,原木の形状等に対する特徴づけはなされているが,原木市売市場と中大規模製材工場の間では川上側の原木生産情報と川下側の原木需要情報が相互に不足していた。原木供給側の情報が製材工場側に不足している状況は非対称情報の経済学における逆選択に繋がり,市売取引から質の高い原木を所持する所有者や製材工場の撤退が起きる可能性を指摘できる。製材工場は地域の原木の質や原木市売市場での選木を評価しており,原木市売市場における原木供給に係る情報の集約と配信は安定的取引の確立に繋がると考察した。他方で,小規模製材工場にとって市場機能は重要であり,原木市売市場の運営に関する更なる検討が必要と考えられる。