近年の比較系統地理学における興味の1つは、過去の第四紀気候変動に伴う分布変遷史の群集レベルでの類似性は各種の遺伝的変異に保存されているかという点である。温帯地域での化石記録と遺伝解析を併せた研究から、各地域で多くの種は似たような分布変遷を経験し、それが遺伝的変異に反映されている可能性が提示されている。ただし、必ずしもすべての種で共通した傾向が認められてはおらず、この議論は終結していない。そこで本研究では、分布域が大きく重複しており、生活史特性の類似性も高いツツジ属2種(ツクシアケボノツツジ、シロヤシオ)を対象として、種内遺伝的構造とその進化史を明らかにした。葉緑体DNA非コード4領域の塩基配列とMIG-seq法により取得したゲノムワイドSNPsを用いて遺伝解析を行った結果、ツクシアケボノツツジでは11葉緑体DNAハプロタイプ、シロヤシオでは3ハプロタイプを認識した。ツクシアケボノツツジでは葉緑体・核ともに集団間分化が著しく、シロヤシオでは集団間分化があまり明瞭ではない傾向が確認された。発表では、これら2種の種内変異の違いとそれを形成した歴史的過程を進化年代・個体群動態の両面から明らかにする。