近年,キクイムシ類から主要な随伴菌類以外の微生物の生育抑制能や樹木の防御物質の分解能といった生理的特徴を持つ細菌が検出され,キクイムシ類と菌類の相互作用系で細菌が重要な役割を果たしている可能性が指摘されている.本研究では,ブナ科樹木の萎凋病原菌を伝搬するカシノナガキクイムシに関わる細菌の基礎的知見を得ることを目的とし,その成虫に存在する細菌群集を調べた.本病の被害地4地点で成虫を採取し,リン酸緩衝液で洗浄後,メス成虫はマイカンギアを摘出した.体表に存在する細菌群集の解析には洗浄に用いたリン酸緩衝液を供試し,体表と虫体,マイカンギアの部位ごと,採取地と雌雄ごとに16S rRNA遺伝子 V3-V4領域の塩基配列を対象として高速シークエンサーによる細菌群集解析を行った.その結果,他のキクイムシ類に関する既往研究と比較し,いずれからもActinobacteriaが高頻度で検出された.また,優占する分類群と群集構造は部位と採取地間で異なっていた.以上のことから,カシノナガキクイムシには他のキクイムシ類とは異なる細菌群集が存在し,採取地や部位によって優占する細菌群は異なると考えられた.