多様な機能を期待される森林資源を持続的に管理・利用していく上で、国内の木材流通における各経済主体間での需給情報の未共有部分の解消が課題となっている。本研究では、国産材のうち主要な用途である製材用材に着目し、関東でも有数の林業地である栃木県の高原林業地を対象に、森林所有者から工務店までの用材流通における売り方と買い方の有する情報の非対称性を把握することを目的とした。高原林業地は関東平野北部に位置し、2018年時点で森林面積は1.8万ha、年間素材生産量は約4万㎥である。大規模製材工場が立地し、年間素材消費量は約22万㎥である。事業者数は、素材生産10社、製材24社、特殊用材16社である(栃木県森林環境部環境森林政策課)。手法として用材流通における各事業者間での情報の不足(非対称性)に関する聞き取り調査を行った。その結果、各事業者間では長年の取引や優良材産地であることを背景に品質に関する情報の不足はみられなかった。だが、共販所等の市場取引を介することで、川上側の原木生産情報と川下側の原木需要情報が相互に不足していた。そして、この状況下で大規模製材工場の需要により直接取引が加速していた。