主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第133回日本森林学会大会
回次: 133
開催地: 山形大学によるオンライン開催
開催日: 2022/03/27 - 2022/03/29
産業革命以来長期に渡り放出された、化石燃料燃焼等に由来する大気汚染物質は、酸性雨や越境大気汚染問題を引き起こし、その沈着による森林生態系への悪影響が懸念されてきた。物質によっては、大気汚染が改善した後も生態系内で長く循環・保持されており、そのようなレガシー(遺物)が、気象変動により可動化し、物質循環系を撹乱し生態系の回復(例えば酸性化から)を阻害する可能性がある。特に硫黄(S)は、近年まで続いた国内及び越境大気汚染による長期的かつ大量な負荷に加え、土壌に吸着・保持される性質から、大気汚染レガシーが大きいと考えられる。中部日本の太平洋側(伊自良湖)と日本海側(加治川)の森林集水域において、その蓄積と流出の可能性を検討した。伊自良湖では、地質由来のSの影響が大きいが、大気沈着由来のSは土壌・植生系に蓄積しており(Sase et al. 2019, Biogeochemistry)、有機態Sがその多くを占めることが明らかになった(Tanikawa et al. 2022, Geoderma)。1990年代半ばに極端気象とともに見られた河川への急激なS流出は、有機態Sの無機化によると考えられ、今後も同様の現象が生じる可能性とともに、さらなる研究の必要性を示唆した。