日本ファジィ学会誌
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ハイブリッドコントローラによる複合システムの分散制御
金 知寛萩野 剛二郎
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1993 年 5 巻 6 号 p. 1424-1438

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抄録
本論文では、サブシステム間の相互干渉による不確定性が存在する複合システムに対して、フィードバックコントローラとファジィコントローラで構成されるハイブリッドコントローラを用い、サブシステム間の情報交換を行なわない実用的な完全分散制御系を提案する。フィードバックコントローラは、ローカルサブシステムの確定モデルの基に従来の制御理論に基づいて状態のフィードバックを行なうように設計される。一方、ファジィコントローラはシステムの不確定性により生じる制御偏差により起動され、人間の制御動作をモデルとして設計された言語制御ルールとファジィ推論により誤差の補償を目的とする補助入力を出力する。本論文で提案されるファジィコントローラは、ファジィ入力変数にフィードバックコントローラの出力を組み込むことにより、フィードバックコントローラとの協調をはかりながら自分の出力を決定する他、ルールが人間の直観的感覚と思考過程に似た形で設計されるため、ルールの構成と適用が理解しやすく、ルールの汎用性より各サブシステムは共通のルールセットを用いて推論を行なうことができるので、各サブシステムに必要となるメモリの負荷は少なくなる。また、汎用的ルールに加えて幾つかのメタルールを用いることによって、それぞれのサブシステムが入力情報に対する適応性を持ち、状況にあう出力が決定できる。本論文で提案するハイブリッドコントローラを用いる分散制御系は、サブシステム間の情報交換を必要としない、新しいサブシステムが加わることによるコントローラの再設計、変更を行なう必要がないなどの実用性とともに、数式モデルに基づく従来の制御理論と人間の制御動作モデルに基づくファジィ制御との融合をはかるということが狙いである。また、多数の数値シミュレーションを通じて、本論文で提案された制御方式を用いることによって、きめの細かい制御が実現できるのが検証された。
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© 1993 日本知能情報ファジィ学会
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