集団力学
Online ISSN : 2187-2872
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日本語論文(英語抄録付)
ネット教育に資する教師教育コンテンツの構想と実装への試み
--- 教職大学院におけるメディア史・メディア論の援用 ---
八ッ塚 一郎
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2019 年 36 巻 p. 45-58

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抄録

 現場教師の意欲と関心を高め、ネット教育を活性化し児童生徒のよりよいネット利用を促進する、歴史的視座と理論的観点を踏まえた教師教育コンテンツを構想した。

 情報端末の普及が進み、児童生徒によるスマートフォン等の所持率が高まるなかで、ネットいじめやSNSによるトラブル等、子どもの関わる事案も多く報告されるようになっている。

 しかし、ただでさえ多忙な教師にとっては、ネット教育を行う必然性や自分がそれを担うべきだという意識を持ちにくいのが現状である。また情報機器に対する馴染みが薄い場合、ネットをトラブルの根源とみなし、もっぱら危険性を喚起する禁止教育の方向に傾きがちともなる。

 教師自身がネットの問題を身近なものとして意識し、魅力や利便性と、危険や依存性とが表裏一体をなすその特性を的確に理解して、より実効性のあるネット教育を展開できるよう、新たな教師教育のコンテンツを構想した。具体的には、メディア史とメディア論を援用し、現代のネット状況に対する新たな視座を獲得することを企図した。

 メディアの歴史を踏まえるなら、インターネットは必ずしも新奇で理解不能な存在ではない。 それは近代化と軌を一にして発展を続けてきた情報メディア群の正統な嫡子であり、現今のトラブルもまた過去に類似する事例や対応策を様々に見出すことができる。メディア論やその哲学的考察を踏まえることで、児童生徒のネット依存や不適切な行動の背景を理解し、根源的な対応のあり方を考察することも容易となる。

 これらのコンテンツを活用し教職大学院において試行した授業内容は、教師のネット認識と教育姿勢に変革をもたらすものであることが示唆され、今後の研究と実践に向けた新たな課題と方向性を得ることができた。

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