抄録
都市部における道路陥没の主原因は,老朽埋設管破損部からの土砂流出による地中空洞形成であると考えられ,実際に陥没事故現場や地中空洞周辺には埋設物が存在することが多い。しかし,陥没や空洞周囲の埋設物に明確な破損部が確認できない事例もあり,土砂流出部のない埋設物付近で空洞形成や陥没発生が引き起こされる原因は不明である。本研究では,埋設物周囲で浸透流の集中箇所,「水みち」があり,土砂流出時には水みちを通して空洞が形成される,という仮説を立て検討を行った。地中埋設物周囲での水みちの様子と,埋設物の存在が土砂流出時空洞形成に与える影響を調べるため,定水位透水試験と小型土槽模型実験を実施した。定水位透水試験では地中埋設物と地盤境界部における透水性を,小型土槽模型実験では埋設物と浸透流の位置関係による空洞進展状況の違いを明らかにし,地中空洞周囲の密度低下領域「ゆるみ」は細粒分流出の他に,飽和度上昇と浸透力による変形に伴い引き起こされることを提案した。