2018 年 13 巻 2 号 p. 123-134
一般に,補強土壁構造物は耐震性が高いといわれているが,完備すべき排水機能が劣化して,浸透した雨水を適切に排除できない状態で地震動を受けると,時に修復不可能な大変形に至ることが報告されている。本研究では,地震時のアンカー式補強土壁の被災メカニズムを明らかにするために,裏込め地盤密度を極端に緩く設定した場合の地震時挙動を検証していくとともに,長期的な性能維持のための排水機能回復を期待した排水パイプの効果について調べた。その結果,裏込め地盤密度が締固め基準を満たしていなくても,補強材の引抜き安定性が確保されている場合は,補強領域が一体となって挙動することから,改めてこの種の補強土壁の耐震性の高さが証明された。一方で,終局限界状態に至るようなケースでは,補強材周辺の裏込め地盤密度が極めて緩い状態であることが分かった。また,排水工による地下水低下により耐震性能が回復することが確認できた。