2026 年 21 巻 1 号 p. 45-59
斜面の地震時滑りは一定の降伏加速度で発生するとされてきたが,振動台実験によれば加速度よりは降伏変位により波形の違いに関わらず一意的に滑り始めることが示唆される。そこで従来のNewmark モデルのスライダーにバネを連結したSS-Newmarkモデルにより,滑り開始の降伏変位u0 を設定した無限長斜面の地震時滑り計算を行った。特性の大きく異なる10 個の強地震動波形による系統的計算により,降伏変位を設定することで,滑り開始加速度Asl は以前の模型実験でも確認されたように従来Newmarkの降伏加速度 A0 を超過する現象が現れるとともに,滑り変位δ は大幅に低下し,大きな影響が表れることが分かった。さらにu0 の値によるAsl やδ の変化傾向や地震波の振動数特性などの関りを明らかにし,従来は認識され てこなかった滑り開始前の微小な降伏変位u0 を導入することの影響の大きさを具体的に例示した。また,実務設計で良く使われる円弧滑り斜面モデルについてもu0 を導入したSS-Newmark 法の計算例を示しその適用性を明らかにすると共に,耐震補強を施した円弧滑り斜面モデルについても,補強工法の特性に応じたu0 値の設定により異なる滑り挙動を評価できる可能性を示した。