2011 年 6 巻 2 号 p. 361-369
まさ土を用いた盛土などの土構造物への降雨の浸透や破壊問題では,乱した試料の物性値が必要であるが,自然斜面や切取斜面への降雨の浸透と崩壊を予測する場合には,乱さない試料の不飽和水理特性を知る必要がある。原地盤のまさ土は,締固めた試料と異なる土構造を有し,不飽和水理特性も大きく異なる。しかし,不撹乱状態のサンプリングや室内の試験が難しく,また,現地盤が非常に不均一であるため,難しい多くの試験を実施してもデータのばらつきが大きく,費やす労力に比して得られる成果が少ないことから,これらの研究はごく断片的にしか行われていない。本研究では,ブロックサンプリングの一種であるネイルサンプリングによって採取した,風化度の異なる乱さないまさ土の不飽和水理特性を求めるとともに,風化度および土構造との関係を明らかにする目的で一連の実験を実施した。その結果,風化度と強熱減量(Ig-loss)および不飽和水理特性の間に比較的よい相関が認められた。このことは,不撹乱試料採取が困難なまさ土地帯で,撹乱した試料から原地盤の不飽和水理特性が推定できる可能性を示した。