抄録
東北地方太平洋沖地震では,地震動のみならず津波による甚大な被害が発生した。具体的には津波の波力による建築物の倒壊や堤防の損壊,土砂の運搬および堆積,膨大な災害廃棄物・津波堆積物の発生等が挙げられる。公益社団法人地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会地盤環境研究委員会(以下,地盤工学会地盤環境研究委員会)では,津波堆積物の堆積状況を広く把握することを目的とし,2011年12月20~22日に福島県沿岸部の東西約7 km×南北約12 km の津波浸水範囲において,計158 地点を踏査し堆積状況を調査した。本研究では,この調査結果を基に津波堆積物の分布特性を明らかにするとともに,津波堆積物を地盤材料として利活用するために不可欠な科学的知見の集積を目的に,当該地から試料を採取し,のべ約1400検体を用いた室内試験により,津波堆積物の物理化学特性を評価した。