2025 年 3 巻 1 号 p. 46-68
2024年1月1日に発生した能登半島地震では,震央から160 km程度の距離にある新潟市内の観測点でも震度5強を記録し,市内の一部地区では液状化が発生して多くの戸建住宅や道路,下水道等に被害をもたらした。特に,信濃川と関屋分水路の左岸側に広がる新潟市西区内は,住宅等の被害が全壊から一部損壊までを含めて1万戸を超える(2024年末時点)甚大なものとなり,その大半は液状化の発生エリア内であった。筆者は,発災翌日より現地調査を実施し,まずはじめは西区から市内中心部の中央区までの被害発生範囲の概略把握を行った。全体概要の把握により,西区の被害範囲はかなり広域に及んだことと,被害の痕跡が確認できる時間や降雪期を考慮し,詳細調査の対象を砂丘縁辺部の斜面周辺の被害に絞って踏査を行い,その結果を本稿で報告する。対象地域は1964年の新潟地震でも被害が発生している。60年前のこの地域はまだ農耕地が大半で,詳細な被害状況は不明であるが,若松による日本の液状化履歴マップ1)には,新潟市中心部から続く被害範囲が寺尾(てらお)付近まで及んだことが示されている。土木学会の報告書2)には,砂丘斜面のすべりによる青山や寺尾で発生した国道116号(現在の県道16号)の側方流動に関する内容が記載されている。 したがって,砂丘縁辺部の被害は新潟地震に続く再液状化によるものであるが,市街地が拡大して市内有数の人口密集地となったことで,家屋被害は60年前より甚大となった。