2025 年 3 巻 1 号 p. 69-73
国土地理院がまとめる「令和6年能登半島地震に関する情報1)」では,空中写真判読により100m2以上の斜面崩壊地及び土砂堆積箇所の範囲が公開されており,2,345箇所の土砂崩壊が確認されている。一方で,国土交通省による「令和6年石川県能登地方を震源とする地震による土砂災害2)」では,土砂災害は456件であることが報告されている。災害箇所のうち輪島市町野町牛尾大久保(わじましまちのまちうしおおおくぼ)の崩壊面積が530,739m2で一番大きく,輪島市市ノ瀬(わじましいちのせ)は234,826m2で第2位の崩壊面積である。町野町の崩壊個所には調査時点ではアクセスが難しい状態が続いていたが,市ノ瀬では救助活動が終了し,調査に入ることが可能となった。市ノ瀬の崩壊では,住民によって土石流が住宅を襲う様子が動画で撮影されており,多くの報道機関で放映された。映像からは流動的な土砂の流出が認められていたが,調査の結果,上流部で発生した複数の崩壊個所では土石流化するほどの水量がなく,崩壊土も岩塊状のものが主体であり,これらの岩塊が最下流の渓流に流れ込み,映像のような流動性の高い土石流になったものではないかと推測された。