医療看護研究
Online ISSN : 2758-5123
Print ISSN : 1349-8630
論説
ChatGPT®は有効な教育支援ツールになり得るか?
-看護学における対話型AIをめぐる議論の動向-
寺岡 三左子
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2023 年 20 巻 1 号 p. 64-70

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抄録

 社会全体のデジタル化や人工知能等の研究開発を推進するわが国の新たな社会構想Society 5.0の実現に向けた動きは加速しており、それらは医療・看護の現場、そして看護学教育の場にも実用可能なレベルで波及することが推測される。とくにAIの進化はめざましい。そこで本稿では2022年11月に公開された対話型AIであるChatGPT®に着目し、看護学における議論の動向から教育における活用可能性を探った。その結果、ChatGPT®のようなAIが看護の教育・研究と統合することによって看護は急速に進歩し、革新的な変化を遂げるという発展的な見方と、技術が急速に進化しているからこそ看護や教育の根源を揺るがす事態が生じるという懸念を示す見解がみられた。議論は始まったばかりであるが、AI活用に対するガイドラインを策定することで、ChatGPT®が有効な教育支援ツールになり得ることが示唆された。
 今後もAIは急速に進化することが予想されることから、看護学教育においてはリスクと懸念事項への対策を講じつつも、教育者と学習者が共にAIに対する理解を深めながら模索することが必要である。AIの普及が進む中、新たなテクノロジーと対峙することは、看護が患者との相互関係を基盤とし、共感や尊厳の重視といった人間的なケアであることをあらためて想起させ、看護の本質について問い直す機会となるであろう。

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© 2023 順天堂大学医療看護学部
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