抄録
[目的]占領下日本の高等学校家庭科教育政策を検証するとき, 文部省指定のホームプロジェクト実験学校, 東京都立南多摩高校を舞台としたCIE教育映画「明るい家庭生活」の検討を欠かすことができない。既にこの映画の制作過程及び脚本内容(雑誌『家庭科教育』25巻5号, 1952年掲載)については, 『教育学研究紀要』第41巻(1996)において報告したが, この度, 映画の企画に拘わるアメリカ側文書(GHQ/SCAP, CIE, CAS Records)並びに英語版の映像を発見したので, 既に入手している日本語版の映像に加えて, これらを検討し, 占領教育政策としての「明るい家庭生活」の実際と意義を明らかにしたい。
[方法]CIE·CAS文書及び日本側文書, 映画『明るい家庭生活』及び『For A Bright Home Life』を使用した実証的研究。
[結果]1. 映像と対照したところ, 『家庭科教育』に掲載された「明るい家庭生活」の脚本は, 表現が正確でない部分を含んでいた。2. この映画の制作を企画したのはCIEのM.ウィリアムソンであり, 日本の台所の改善を高校生のホームプロジェクトを通して実現したいという思いがその背景にあった。3. 英語版『For A Bright Home Life』には, 制作及び提供がGHQ/SCAP, CIEであることが明記されていた。4. 映画は, 二人の女子高生がHPによって農村及び小都市の台所を改善して行く過程をリアルに描いたもので, 日本の生活課題の把握と新教育の方法の理解という両面で啓蒙的役割を果たした。