抄録
目的:高齢者を取り上げる授業実践研究·報告をみると、高齢者が独自な生活要求を持つことが強調される余り、前提となるべき高齢者も学習者と同様な要求を持つ存在であることが忘れ去られる可能性を強く感じることがある。本研究では、教材に対して高齢者の立場からの見方を加えることによって、その教材に対する理解がさらに深まると同時に、その学習の中で高齢者についての理解も、学習者自身の延長線上のものとして深まると考え、教材開発·授業実践研究を行った。
方法:題材は住生活の「自分らしい住まい方」とし、学習者にとって近い将来である「大学生の一人住まい」と遠い将来である「高齢者の一人住まい」を取り上げた。授業実践を行ったのは静岡県立高校2年生2クラスである。1998年実施。資料としては、事前調査、各授業(2コマ)後と事後の感想、各小題材への興味·関心、楽しさ、有益性の評価を採取した。
結果:感想から、「大学生の一人住まい」では、家具や収納の工夫による住み方の違いへの気付き、「高齢者の一人住まい」では、趣味や生きがい、そして人柄や生き方が住み方に反映されていることへの気付きが明らかになり、住まい方についての理解の深まりが明らかになった。高齢者の理解については、生きがいを大切にして楽しんでいる、ただしこれらは寂しさの反映か等の記述があった。しかし、小題材「高齢者の居室」に関する興味·関心や楽しさの評価は最も低い。