日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第46回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 19
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第46回大会口頭発表
ジェンダー・フリー教育を組み込んだ高等学校家庭科における授業実践
*鈴木 泰子長澤 由喜子
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抄録
<目的>性別役割分業にとらわれない意識を育成することは、生活自立力を高める上で前提とすべきものであり、ひいては社会におけるより確実な男女共同参画をもたらす。同時に、個人においても自分らしい、より多くの選択の可能性を拓くものである。ジェンダーにとらわれない意識を育成するためには、家庭・地域・学校が三位一体となった教育が大きな力を持つが、効果的な教育を展開するためには、三者それぞれが独自の機能を担いつつ、独自の可能性を追求することが必要となる。中でも、将来の家庭・地域を支えていく人材の育成を担うべき学校教育が、ジェンダー再生産の場となっている事実を見逃すことはできない。学校教育におけるジェンダー・フリー教育の可能性を模察するとき、教科としての特性上、家庭科がジェンダーと大きく関わる側面を持つ。特にも高等学校家庭科は、その目標として男女のパートナーシップの育成を明確に打ち出していることから、本研究の対象を高等学校家庭科に焦点化することとした。本研究では、高等学校家庭科の授業にジェンダー・フリーの視点を組み入れる上で効果的な授業構成や展開の方法についての手がかりを得ることを目的とし、自己の在り方を追求させ、ジェンダー・フリーの気づきを促す授業展開を試みた。その実践と検証を通して、今後のジェンダー・フリー教育の授業プログラム構成に寄与する知見を得たいと考えた。
<方法>実践対象校としての特徴1)に鑑み、「家庭生活・保育」領域に「個人としての在り方」「職業人としての在り方」を考える授業9時間を組み込んだ授業を構成した。自己開示ならびに他者とのコミュニケーションを重視した展開とし学習プリントの感想文分析をおこなった。授業実践の時期は2002年4~7月、分析対象は高等学校1年生59名(男子28名、女子31名)である。
<結果>分析から得られた結果は以下の通りである。
(1)ジェンダー・バイアスの改善 ?最終的・全体的な評価では、全体の76.3%で学習目標が達成されていた。目標到達群は、価値判断に留まるグループと個人的意志決定に至ったグループとに大別された。 ?最終的・全体的な評価において目標到達に至る条件としては、「性の受容」「家事」の両方またはどちらかがなされた場合、最終的・全体的な評価において個人的意志決定ランクに至る可能性が高くなっていた。 ?最終的・全体的な評価において、気づきは得たものの目標到達に至らなかった集団が抱える問題点は2つ存在していた。1つは、情報収集・整理・認識に関わる知識面でのつまずきであり、もう1つは人権意識や多様性の受容に関わる価値判断のつまずきであった。
(2)男女分離授業の効果 ?男女別授業の設定は男子生徒には大きな影響を与えるものではなかったが、女子の目標到達度を高めるという結果が得られた。 ?その理由としては一連の授業展開により、自分の抱いている葛藤の一因がジェンダーであると知ったことが手がかりとなり、女子においては、自己のあり方を検討する段階に進むことが容易になったと考えられる。 なお、授業前後の性差観スケールの比較と感想文の内容との対照からは、性差観スケールを用いる上での留意点が示唆された。                              1)鈴木黍子「高校生のジェンダー覿に関する構造均分析」,日本家庭科教育学会第45画大会研究発表要旨集,P.62(2002) 授業実践校の位置する地区の高校生は、「保育」に関連した強固な性別役割分業観を持つ一方で、<女性の理想的なライフコース>については、「結婚して、職業を続け、子ビもを持つ」の選択が最も多く、女性により多くの負担を強いることを当然とする意識を保有していた。授業実践校の個別の特徴は、以下の二点であった。?<気づき>と<性差覿>との関連性は存在したものの、他枚と比較してストレートなつながりを示すものではなく、性差別への気づきがあっても性差覿スケールではバイアスを帯びた判断をする傾向が認められた。?男女共学校であるにもかかわらず、<性差観>の因子別クラスター分析においては、フリー傾向の強い女子とバイアス傾向の男子とが対照的な結果となった
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© 2003 日本家庭科教育学会
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