抄録
【目的】
家庭科で学習する知識や技能・技術などは、日常生活で繰り返し活用してこそ一層身に付けることができる。学習したことを家庭生活で継続的に実践できるようにするためには、家庭との連携を図る必要がある。しかし、家庭では受験教科は重視されるが、家庭科は軽視されているようにも見受けられる。本研究では、家庭科観に焦点をあて、家庭科学習内容の日常生活における実践と家庭科観との関連、家庭での家庭科学習と家庭科観との関連、親の家庭科観や家庭生活観と家庭科観との関連を検討した。
【方法】
男女共修家庭科を履修した大学生を対象として、質問紙法により調査を行った。調査期間は2005年8~10月。有効回収率87.4%、有効回答数は692(男性436、女性256)であった。調査の主な内容は、家庭科学習内容の日常生活における実践、家庭科のイメージ、家庭科に対する意見、家庭での家庭科学習、親の家庭科観と家庭生活観である。
【結果及び考察】
1.各調査内容に対する最小の構成次元
主因子法・Promax回転による因子分析を行った。家庭科学習内容の日常生活における実践(17項目)からは4つの因子が析出され「環境と消費」因子、「家族」因子、「住」因子、「家事」因子と命名した。家庭科のイメージ(15項目)からは「面白さ」因子を抽出し、家庭科に対する意見(27項目)からは「態度を育てる教科」因子と「ライフスタイルを見直す教科」因子を、家庭での家庭科学習(9項目)からは「学んだことを実践」因子と「役立ちと工夫」因子を、親の家庭科観(8項目)からは「受験重視」因子、「家庭科不要」因子、「男子に家庭科不要」因子、「家庭科に好意的」因子を、親の家庭生活観(10項目)からは「勉強よりも家事」因子、「団らん」因子、「自立」因子、「イライラ」因子を抽出した。
2.家庭科学習内容の日常生活における実践と家庭科観との関連
各下位尺度間の相関関係をピアソンの積率相関を用いて検討した。家庭科は面白い、家庭科は態度を育てる教科である、家庭科はライフスタイルを見直す教科であるという家庭科観を持っている人ほど、家庭科学習内容を日常生活で実践していた。
3.家庭での家庭科学習と家庭科観との関連
家庭での家庭科学習が家庭科観に与える影響を重回帰分析により検討した。家庭での家庭科学習「学んだことを実践」から家庭科観への影響はあまり認められなかったが、家庭での家庭科学習「役立ちと工夫」から家庭科観「面白さ」「態度を育てる教科」「ライフスタイルを見直す教科」に対する標準偏回帰係数は有意であった。
4.親の家庭科観や家庭生活観と家庭科観との関連
重回帰分析の結果、親の家庭科観「家庭科に好意的」から子どもの家庭科観に対する標準偏回帰係数は男女とも有意であった。また、親の家庭科観「男子に家庭科不要」から男子の家庭科観に対する負の標準偏回帰係数が有意であった。親の家庭生活観「自立」から男子の家庭科観に対する標準偏回帰係数が有意であった。
以上の結果より、家庭科観には、家庭での家庭科学習、親の家庭科観や家庭生活観が影響を及ぼしていた。家庭科教師は、家庭科の学習のねらいや教科としての必要性を子ども達や特に男の子の保護者に対して情報を提供していく必要がある。一方、家庭科で学んだことを日常生活においてただ実践させるのではなく、家庭科で学んだことをもとに試行錯誤させ工夫する機会をもたせる、人に役立っている、自分の生活に役立っていると感じさせるような観点から家庭での実践を課すことが大切である。このことが、子ども達に家庭科は面白いと感じさせることになり、生活をよりよくするために主体的に実践する能力と態度を育成することにつながると考える。