日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 12
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第49回大会 口頭発表
調理実習における技能の習得に関する研究
*河村 美穂
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抄録

【研究目的】
 実践力の育成を目標の一つとしてきた家庭科教育においては、数多くの実習や体験的な学習が行われてきた。ただし、戦後三否定のもとにスタートした家庭科において、否定の1つである「技能教育ではない」という定義は、その後の家庭科教育の技能習得に少なからず影響を与えていると思われる。特に、調理実習においては、調理に関わる技能の習得をどのように位置づけるかについて必ずしも明確にされないまま数多く実践が蓄積されてきたといってよい。近年では楽しく体験するだけの調理実習も散見され、児童・生徒の生活技能の低下もあわせて、技能の習得をどのように位置づけるかという問題は急務の課題であると考えられる。
 そこで、本研究では戦後の調理実習研究において技能習得がどのように位置づけられてきたかを概観し、調理実習における技能の習得について考察を加えることを目的とする。
【研究方法】
(1)戦後の学習指導要領において調理実習の技能習得がどのよう  に位置づけられてきたかを概観する。
(2) 日本家庭科教育学会誌の掲載論文を中心に、これまでの調理実習研究を概観し、調理実習における技能の習得について考察する。
 なお、本研究では調理実習研究を、「家庭科教育で実践される調理実習に有用な知見を得ることを目的としたもの」とし、調理実習の教材に関する研究から、実態調査をもとに調理実習の実践に関わる基礎資料を提示している研究、および理論的な研究まで多様な形態の研究を対象とする。
【結果と考察】
(1)学習指導要領においては、小学校では、1956年要領以降家庭生活で必要とされる初歩的な技能の習得を目指してきた。これは身辺自立をはかるための基礎的な技能と位置づけられている。中学校技術・家庭科においては、生活と技術のかかわりを認識し、生活を豊かにするための技術の習得を目指してきた。高校では、家庭生活を営むために総合的な技術を習得することが目指され、調理技術はその基礎となるものと考えられている。
(2)調理実習研究のうち、調理技能に関する研究はおおまかに3つに分類できる。一つは児童生徒の技能を技能テストによって測定し、その実態を把握する、または指導方法の基礎データとする研究である。多くは量的研究である。二つ目は、同じく技能の状況を、質問紙により把握したもので、質問紙調査によって捉えた技能の実態と、技能の必要度などの意識との関連を検討するものが多い。三つ目は技能の習得の状況を観察によって捉える研究である。この種の研究は限られた研究対象を長期にわたり観察調査することから、量的な把握だけでなく技能の質的な変化も詳細に捉えている。
 このように、調理実習研究では、技能の習得状況やその変化の様子を把握するための研究が数多く行われてきた。しかし、いずれの研究も調理技能とは「包丁を使って切る」「盛り付ける」「計量スプーンを使える」「だいこんのいちょう切りができる」「なべでご飯をたく」「カレーライスを作ることができる」というように日常の調理操作で使用する技能のうちいくつかを抽出したものであり、一定の定義がなされたものではない。言い換えれば、個々の研究によって示される技能は一定の基準で抽出されていないにもかかわらず、同一の技能として論じられてきたという傾向がある。学校で学ぶ調理技能とはなにか、児童・生徒の実態との関連から定義する必要がある。 
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© 2006 日本家庭科教育学会
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