日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 31
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第49回大会 口頭発表
子どもの自尊感情と家庭科学習課題との関連
*大島 真理子荒井 紀子
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キーワード: 自尊感情, 家庭科, 学習課題
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抄録

【目的】
 近年、自尊感情の欠如と青少年の問題行動との関連や、国際比較調査において日本の青少年の自尊感情は他の国に比べ際立って低いことが報告されている。これらの背景には、子どもが豊かに自尊感情を育む機会が少ないことが挙げられ、教育において自尊感情を育むことの重要性が高まっている。本調査の目的は、生徒の自尊感情の実態と家庭科との関連を明らかにし、家庭科の学習を通して自尊感情をどう育むことができるのかを検討することである。
【方法】
 福井市および近郊の小学5年、中学2年、高校2年を対象に、2005年7月に自記式質問紙法で調査を実施した。回答数は1194名である。調査の枠組みは「基本属性」と「児童、生徒の意識・実態」を2つの柱とし、「自尊感情」「発達課題」「他者からの承認・受容」「ジェンダー」の4つの視点から質問を構成した。このうち「発達課題」は「生活立」「市民性」「他者との関係性」「自己決定」「将来への意欲」の5項目について設問を設定した。集計・分析には、データ解析ツール「SPSSforWindows」を使用した。
【結果】
 性別・学年と、その他の全ての質問項目との関連について有意差が明らかになった項目について述べる。
1)「発達課題」:生活自立は、男子より女子の方が高く、学年が上がるにつれより高くなっている。社会問題への関心は女子より男子の方が高い。生徒会などの自治活動への参加は学年が上がるにつれて低くなっており、年齢に応じた市民性が育まれていないといえる。他者との関係性は、男子より女子の方がより親密な関係を築いており、学年が上がるにつれて他の人に相談したり協力を求めるようになっている。自己主張と自己決定は女子より男子の方が高い。しかし、自己決定は学年が上がるにつれて低くなっている。将来への意欲は、学年が上がるにつれて高まっている。発達課題の合計得点は女子の方が高い。学年では小学生が中高校生よりも高いが、小学生は課題が達成されている子とされていない子に両極化している。
2)「ジェンダー」:男女平等意識と性別役割分業意識については、性 別では女子、学年では高学年の生徒の方が、ジェンダーにとらわれない意識が強い。また、女子の方が性差別を受けた経験が多い。些細なことで落ち込みやすく、人の評価を気にする割合は性別では女子、学年では高学年の生徒で高い。
3)「他者からの承認・受容」:女子の方が家族や友人から承認され受容されていると感じている。また、教師や地域の人から承認され受容されていると感じる割合は学年が上がるにつれて低くなっている。
4)「白尊感惰」:男子よりも女子の方が自尊感情は低く、小学校の時はその差は小さいが、中高生では男女差が大きい。自分が好き、自分の満足度、自信などの項目では、学年が上がるにつれて低くなっている。
5)「自尊感情との関連」:自尊感清とその他の質間項目及び、項目ごとの合計得点との関連についてカイニ乗検定を行なった結果、「発達課題」「他者からの承認・受容」「ジェンダー」において関連がみられた。自尊感情が高い子どもは家庭科で育む力である「生活自立」「市民性」「他者との関係性」「自己決定」も高いことが明らかになった。
 以上、今回の調査から家庭科の学習課題を通して、自尊感情を育むことができることが示された。その一方で、学年や性別の関連をみると、特に中高校生は、政治への関心や自治活動への参加など市民性の低さが明らかになった。また、全体的な自己決定力の弱さや、特に女子における自己主張の弱さなど、今後家庭科の中でより意識的に取り組むべき課題も示された。
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© 2006 日本家庭科教育学会
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