日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: A4-2
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口頭発表
高校生の生活設計への積極的態度に影響を及ぼす要因
*仲田 郁子久保 桂子
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抄録
1、目的
平成21年告示の学習指導要領において、生活設計は新たに独立した単元として、すべての高校生が家庭科学習のまとめとして取り組むことが明示されている(家庭総合)。
筆者らが2007年に行った分析から、生活設計の学習においてリスク管理の視点を組み込むことは、人の一生について深く考えさせる点において効果があると考えられたが、統計的な確認は課題として残された。またリスクへの対策が貯蓄や保険に集中する傾向が見られ、それら以外の社会保障制度や、様々な人的ネットワークなどと関連させた授業設計も今後の課題であると考えられた。
そこで本報告は、より総合的な生活設計の授業の構築のために、統計的な手法を活用して、高校生の生活設計への積極的態度に影響を与える要因を検討し、その積極的態度と家庭科教育との関係を明らかにすることを目的とする。
2、方法
千葉県内公立高校4校を対象として、各校の家庭科担当教諭に依頼して質問紙調査を行った。実施時期は2009年12月~2010年2月、対象生徒は家庭科を学んでいる1~3年生である。配布数670票、回収率100%、性別不明票を除き有効票数は665とした。属性は男子320人、女子345人、1年347人、2年274人、3年44人である。分析に先立ち、生活設計への積極的態度の尺度を作成した。仕事や家族形成について考えているか、40代の自分、70代の自分を考えることがあるか、将来のことを考えることが大事だと思うか、将来のために勉強や習い事を頑張るべきかなどの7項目について、「そうである」(5点)から「全くそうでない」(1点)を得点化し、7項目の合計点を算出し、積極的態度の尺度とした(7項目のα係数=.7276)。
3、結果
(1)生活設計への積極的態度に影響を与える要因について、性別、学習意欲、親からの働きかけ、肯定的自己認識、リスクについての認識の5項目の変数を選び、重回帰分析を行った。その結果、すべての変数について有意な関係が認められた。その中で最も強く影響を与える要因は肯定的自己認識であり、次に影響を与える要因はリスクについての認識であった。また、男女別に重回帰分析を行った結果では、親からの働きかけについて、男子では影響が認められたものの、女子では影響が認められなかった。
(2)生活設計への積極的態度の得点を、高得点・中得点・低得点の3グループに分け、家庭科学習の重要性の認識、生活資源の重要性の認識、社会保障制度への関心について、関係を検討した。その結果、高得点グループは、他の2グループと比べて3項目のいずれにおいても、高い認識や関心を示した。
(3)以上の分析結果から、生活設計への積極的態度は、個人の自己認識や家庭環境から影響を受けるものの、家庭科教育との関連では、リスクについての認識から影響を受けることが明らかになり、リスク認識を高める教育内容の重要性を統計的に確認することができた。またリスクは大きく3つのカテゴリに分類でき(事故・病気、仕事、家族)、それぞれが異なる特徴を持つことが明らかになった。さらに、生活設計に対する積極的態度は、衣食住を含めた家庭科学習への積極性や生活資源、およびさまざまな社会保障制度への興味、関心とも強く関連することが認められたため、家庭科の全領域と関連させながら生活設計に積極的に取り組ませることは、きわめて大きな意味を持つことが確認された。
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© 2010 日本家庭科教育学会
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