日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
多発分節的下肢閉塞性動脈病変に対する一期的ハイブリッド血行再建術の検討
猪狩 公宏工藤 敏文豊福 崇浩西澤 真人内山 英俊小泉 伸也米倉 孝治地引 政利菅野 範英井上 芳徳
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2012 年 21 巻 4 号 p. 589-593

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抄録
【目的】当科では多発分節的下肢閉塞性動脈病変に対し鼠径靱帯上の血管内治療と鼠径靱帯以下の手術治療を併用したハイブリッド治療を行っており,当科で経験したハイブリッド治療症例について検討した.【対象と方法】対象は2008年4月より2011年3月までに一期的にハイブリッド治療を施行した16例17肢である.男性13例,女性3例で,平均年齢は73歳であった.Fontaine分類はII度:11肢,III度:1肢,IV度:5肢であった.検討項目として,手術因子や術後合併症,開存率や肢切断の有無について検討した.【結果】血管内治療では大動脈病変3例に,総腸骨動脈病変11肢および外腸骨動脈病変6肢にステントを留置した.鼠径靱帯以下の血行再建術は大腿動脈に対する内膜摘除術(thromboendarterectomy; TEA)を11肢に,バイパス術は9肢に対し施行し,そのうち6肢では膝下動脈へのバイパス術を施行した.足関節上腕血圧比は治療前後で0.47±0.21から0.76±0.25と有意に上昇を認めた(P<0.05).術後合併症は1例で呼吸不全を認めたが軽快し,術後30日以内の死亡例は認めなかった.1例に術後9カ月で膝下切断を要した.Fontaine III,IV度における救肢率は2年で83%であった.【結論】多発分節的下肢閉塞性動脈病変に対し,大動脈腸骨動脈病変への血管内治療と鼠径靱帯以下の末梢動脈病変の手術治療を組み合わせることにより,安全かつ満足のいく治療成績が得られており有用な治療法といえる.
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