抄録
【目的】
近年、教育分野においても環境整備や教育コンテンツの情報化が求められている。デジタルコンテンツなどICTを活用した授業は「確かな学力」の向上につながる教育的効果が見込まれ、更なる調査・普及が進められている。
本研究では、ミシンの扱い方を学ぶ学習におけるデジタルコンテンツ使用の学習効果や有効な利用方法を明らかにする。本研究で試用したデジタルコンテンツは、ミシンの使い方を初めて学ぶ小学校教材として、小学校での使用、教師等による評価などを元に改善を加えて作製したFlashアニメ教材、および実写DVD教材である。
この2種のデジタルコンテンツを単体にて使用した場合、また実写・ア二メ教材を共用した場合に、教育的効果に相違があるかを比較検証することを本研究の目的とした。
【方法】
調査対象は国立大学附属S小学校第5学年3クラス(1組36名、2組37名、3組37名)の計110名である。2008年10月20日と10月28日に教材を用いて授業を行った後、アンケートを実施した。授業で用いたデジタルコンテンツは、1クラスは(1)実写DVD、もう1クラスは(2)Flashアニメ、そしてもう1クラスは(3) 実写DVDとFlashアニメの両教材を使用して、3クラスの学習の定着度や児童の感想などを比較した。授業は、3クラスとも一斉指導形式で同一教諭が行った。
学習の定着度を測るポスト質問紙アンケートを実施した。アンケートは、下糸のかけ方などの糸の軌跡を書かせ、正確に書けているかの正答率、また児童が理解できたかどうかの○×よりる回答数、ならびに自由記述の感想から構成される。アンケートの回収率は93%であった。
【結果】
「下糸入れよう」の正答率は、(1)実写DVDを使った場合43%、(2)Flashアニメを使った場合65%、(3) 実写DVDとFlashアニメの両教材を使った場合84%となった。実写DVDを使うよりもFlashアニメのほうが正解率は高く、またFlashアニメだけを使うよりもFlashアニメ・実写DVDの両教材を使ったほうが正解率は高かった。
「上糸をかけよう」の正答率は、(1)実写DVDを使った場合73%、(2)Flashアニメを使った場合59%、(3) 実写DVDとFlashアニメの両教材を使った場合92%となった。「下糸をかけよう」と逆に、Flashアニメを使うよりも実写DVDのほうが正解率は高くなっていた。ただし単体で使用するより両教材を併用したほうが正解率が高かった。
「下糸をまこう」「下糸を入れよう」「下糸を引き上げよう」「上糸をかけよう」「ぬい始め・ぬい終わり」の5項目のうち、よく理解できたものを複数選択可で○をさせた。「上糸をかけよう」では(1)実写DVD76%、(2)Flashアニメ68%、(3) 実写DVDとFlashアニメの両教材使用89%の児童が○をしていた。実写DVDやFlashアニメ単独の使用よりも、両教材使用のほうがよく理解できる項目が多かった。他の項目でもほぼ同様の傾向であった。
本研究では実写DVD<Flashアニメ<実写DVD+Flashアニメ共用の順に理解度が高い結果となり、場面によって実写DVDが良い、Flashアニメが良いなどがあることが分かった。両教材の使用によって理解しづらい部分を補い合い、児童にとって分かりやすくなるのだと考える。