抄録
【問題関心と目的】
高校教育改革が進められている東京都では、中高一貫校や新しいタイプの高校の導入をはじめ公立高校の再編成が行われている。そのような状況の中、家庭科に関する学校設定科目の設置及び家庭学科の消滅の危機など、公立高校における家庭科も変容してきている(小高他,2009)。一方、東京都には全国的にみても群を抜く237の私立高校があり、都内高校総数に占める私立の割合は54%(平成21年度東京都学校基本調査報告)である。しかし、東京都の私立高校の家庭科教育について、男女必履修実施期の調査報告はあるものの、現在の改革における私立高校の家庭科教育を検討した報告はない。
そこで本研究では、東京都内の私立高校における家庭科教育がどのように位置づけられ、どのような状況に直面しているのかを明らかにすることを目的とする。
【方法】
私立中学高等学校名簿による東京都の私立高校の学科の設置状況の検討及び無作為に抽出した東京都の私立高校237校中120校の平成22年度版学校案内を収集し、教育課程、各学校の特色やコース制、家庭科の履修学年、履修科目などの検討という2方法により調査を行った。
【結果】
1)学科の設置状況
学科の設置状況は、237校のうち206校が「普通科」のみの設置である。また家庭科に関係するととらえられる学科を設置している学校としては、「普通・調理・デザイン」「普通・調理」「普通・食物」「普通・商業・家政・衛生看護・衛生看護専攻科」「普通・福祉専攻科」を設置している学校が各1校ある。その他「普通・その他の学科」を設置している学校が19校、「国際科」のみ「鉄道科」のみ設置が各1校、「商業科」のみ設置が2校、「音楽科」のみ設置が3校であった。
2)コース制の細分化と教育課程の特徴
普通科での顕著な傾向は、1校に大学入試のレベルに対応した複数のコース(例えば「特進クラス文系」「特進クラス理系」「普通クラス文系」「普通クラス理系」など)が設置され、普通科が細分化していることである。そして、コースに応じてそれぞれの教育課程が設定され、1つの学校に同学年で複数の教育課程が併設されている。
3)コース制における家庭科の履修状況
必履修の家庭科の設定は、_丸1_同じ学校の中のコースによって異なる教育課程が設定されているが家庭科は共通に履修している学校、_丸2_コースによって履修学年が異なる学校、_丸3_履修科目が異なる学校、_丸4_履修科目も履修単位数も異なる学校に大別される。
【まとめ】
都立高校は各学校の「個性化・特色化」により学校単位の「多様化」「細分化」が進められてきているが、私立高校は主に大学受験を目的とした「普通科」を中心としてコース制を設けて細分化し、1つの学校に複数の教育課程が存在している特徴が明らかになった。家庭科の設定状況は、生徒が進むコースによって履修科目や履修学年が異なることが明らかになった。
このような中で、生徒たちが家庭科を学ぶ機会が等しく保障されているのか、また大学受験を中心とした教育課程の中で、家庭科教師はどのような課題と向き合っているのかを明らかにすることが今後の課題である。
小高さほみ他(2009)『高校教育改革の「多様化」における家庭科の
課題』日本家庭科教育学会第52回大会要旨