抄録
【目的】
高校家庭科は、女子のみ4単位必修から、平成6年に男女4単位必修となり、男女共同参画社会を背景に新しい家庭科の時代を迎えた。しかしながら、学習指導要領改訂で平成15年に「家庭基礎」2単位科目が登場し、この数年で多くの学校が2単位の「家庭基礎」科目へ移行し、家庭科の単位減により家庭科教員の配置や学習環境が悪化していることが懸念されている。
そこで、家庭科教員へアンケート調査を実施して、現在の高校の家庭科の履修状況や教員配置・単位減に伴う学習内容の変化、学校現場での家庭科教員の抱えている問題を把握して、単位減をめぐる問題点と課題を明らかにすることを目的とした。
【方法】
16都道府県の普通科を設置している公立の全日制高等学校の家庭科主任へ、平成22年2月に郵送によるアンケート調査を実施した。1311校へ郵送して611校から回答があり、回収率は46.6%であった。普通科のみを調査した理由は、平成21年現在高校生の72.3%が普通科に所属しており、専門学科では専門科目の縛りがあり、総合学科や単位制の学校は数が少ない上必修科目の選択制も多いため、家庭科の履修状況について、普通科のみの教育課程を調査対象とした。
調査項目は、家庭科教員の配置と持ち時間、家庭科の履修状況、家庭科への理解、家庭科の単位減の影響と問題点、家庭科の教科観と学習活動、家庭科の単位減に関する取り組み等である。
【結果】
(1)家庭科の教員配置は、専任1人の学校が62.5%で、専任を置いていない学校が6.2%であった。家庭科の専任1人当たりの平均授業総持ち時間は15.3時間であるが、約6割が家庭科に加え、「総合学習」「情報」「福祉」「学校設定」の教科等を担当していた。
(2)家庭科の必修について、12.6%の学校で2種類以上の教育課程が設けられ、複数設置の場合、複数の必修科目を設置するよりも、同一科目で履修単位数を変える学校の方が多い。教育課程の延べ数でみると、「家庭総合」35.7%、「家庭基礎」63.3%、「生活技術」0.6%であるが、「家庭総合」「家庭基礎」ともに2単位から6単位以上の履修もあり、必修科目名では必ずしも単位の履修状況は計れない。
(3)勤務校における家庭科への理解や状況は、34.5%が教育課程の編成に教科の意見が反映されにくいと感じており、もう既に「家庭基礎」2単位の学校も多いが、8.2%が現在家庭科の単位減を勧められていると回答していた。また84.5%の教師が、生徒は家庭科の授業に意欲的であると考えており、約6割が、学校や他教科教員は、家庭科の内容や取り組みを理解し評価している、と捉えていた。
(4)約7割が家庭科必修科目の単位減を経験し、削減した学習内容は「衣生活」「住生活」が多く、約8割が実習時間を減少させていた。また、家庭科が単位減になって約8割が困っていることがあると回答し、そのうちの4割が、専任が減らされたこと、教科のことで相談する人がいないことを挙げていた。
(5)家庭科の教科観として「自立」と「共生」を重要と考え、家庭科の授業を通して「生活の知識・技術」「問題解決能力」「人とかかわる力」を重視して指導している。家庭科の希望単位数として78.6%が4単位以上をあげ、現在よりも単位増になった場合、「調理実習」の回数を増やし、「保育や高齢者福祉関連実習・交流」「調理実験」「調べ学習」を実施したいと考えている。
(6)家庭科の単位減に対する取り組みは、73.5%があると回答しており、都道府県の高校家庭科部会や地区会・自主的研修会で実態調査や情報交換をしている。