日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: B2-6
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口頭発表
家庭科教育実習における実習生の実態と意識
*貴志 倫子中西 雪夫財津 庸子柳 昌子赤崎 眞弓宮瀬 美津子小林 久美福原 美江長山 芳子
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抄録
【目的】 
 教員養成において実践重視のカリキュラムが求められている今日,教育実習の位置づけはますます重要になってきている。教科指導の観点から教育実習を対象とした研究では,教科間の比較から教科特有の課題を検討した照井,井上(1998)など個別の大学を単位とした調査が広く行われている。一方,教育実習に受け入れ校の視点を加えると,各大学の多様な教育理念や実習システムの相違が,実習指導を困難にしている側面も浮かんでくる。大学の枠を超えて,多面的な観点から実習の課題を整理し,家庭科特有の課題を明らかにする必要がある。
 そこで,家庭科の教育実習の実態を明らかにし,それをもとに実習改善に資することを目的とした共同研究が日本家庭科教育学会九州地区会有志によって立ち上げられた。研究は,「実習受け入れ校担当者の意識と実態」「大学の教育実習カリキュラムの現状」「教育実習生の意識と実態」の3班に分かれて行われている。本報告では実習生調査の結果を分析すると共に、それを先行して実施された受け入れ校担当者への調査結果とつき合わせることによって、家庭科の授業を行う教育実習生への支援充実のための課題を明らかにすることを目的とする。
【方法】
 2009年2月~2010年1月に,教育実習を終えた大学生に質問紙調査を行った。対象は,教員養成系学部および家政系学部で初等または中等家庭科の教育実習に参加した者とした。調査票は各校の担当より学生に配布し,留め置き法により回収した。福岡,佐賀,長崎,大分,宮崎,熊本の6県9校から計134票を回収した(有効回収数56.1%)。主な調査項目は,(1)授業準備や実習中の生活等,実習生自身の活動に関する項目,(2)事前事後指導や実習環境等,大学および実習校に関する項目である。
【結果】
 (1)学生が教育実習前と実習中に行った活動のうち,自主的に授業準備を始めた時期について,「1ヶ月前」(45.6%)との回答がもっとも多く,以下「2ヶ月以上前」(22.3%),「1週間前」(20.4%)であった。実習で行った家庭科授業時数の平均は,小学校が3.4時間,中学校9.6時間,高等学校9.5時間であった。このうち,実習・実験を含む授業時数の平均は,順に1.9時間,2.8時間,3.0時間で,平均授業時数に占める実習・実験を含む授業時数の割合は小学校の54.5%に対し,中・高等学校では3割程度であった。
 (2)大学での事前指導について,「とても役に立った」と回答した者が多かった項目は「実習校での授業参観」(58.0%),「大学の先輩の助言」(55.7%)で,教育実習・家庭科指導に関連する科目等での「学習指導案作成」(50.5%),「模擬授業」(46.5%)と続く。大学教員による個別の「学習指導案添削」,「教材研究指導」は2割程度が「役に立たなかった」と回答し,「大学全体の事前指導」は35.3%が「役に立たなかった」と回答した。事後指導で「とても役に立った」と回答した者が多かった項目は,「実習校教員による事後指導」(62.9%),「家庭科の大学教員による事後指導」(41.1%),「大学教員による事後指導」(35.6%)であった。
 (3)実習校における実習に必要な資料・備品・設備について,実習生にほとんど不満はみられなかった。ただ,受け入れ校調査の結果では,実習生が受身的で自ら工夫しようとしないことが課題とされており,不満のなさは,実習生の要求水準の低さの表れとも考えられる。実際に多くの実習生が実習前に購入していたのは「教科書」と「学習指導要領」にとどまっており,実習校の資料・備品やインターネット検索等の範囲の教材研究となっていることが推察された。
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© 2010 日本家庭科教育学会
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