抄録
<目的>
家庭科における住居領域について中・高校の教育現場では積極的に取り入れられていない状況がみられる。また取り扱ったとしても軽く話すだけの授業に留まっている場合が多いようである。その理由として、1教師自身が学生時代の住居領域の授業での楽しい経験が少ない 2住居の話は個々人の家庭の事情からプライバシーにかかわり問題になるのではないかとの心配 3住居の内容は難しく何を指導してよいか分からない、などが推測され、これらの課題解決は極めて難しい。とはいえ<住まいは人間が生きていくためには不可欠であり、人格形成の場である>ことを考えると、このまま放置するわけにはいかない。筆者はここ数年視点を変えて3Dソフトによる住居の学習を試みている。ソフトを活用することで学生の住まいへの興味・関心は高まり、「楽しかった」と多くの学生は感想を述べている。先ずは教職を目指す学生の、住居についての関心が高まることが大切である。本発表は、3Dのソフトに取り組んだ学生の様子から、何がどのように面白かったのかについて報告し、またソフト活用による住居領域指導の可能性と課題等についても触れたい。
<方法>
主に家庭科・教職課程の履修生一部・二部生を対象に、20~21年度の「住居学」「教育方法及び技術」「生活美学」等の授業において3Dソフトを利用した。テーマは<ひとり暮らしの住まい><LDKの空間設計><DKの空間設計>とし、それぞれの設計条件は各自で決める。コンピュータ室の利用は90分の6時間程度である。学生はパソコンには多少慣れてはいるものの、3Dソフトの使用ははじめてである。課題の実施に当たり、住居学を学ぶ目的、生徒に学ばせたいこと(考えさせたい・身につけさせたい・実践させたいこと)等を話す。ソフトの立ち上げ方を説明すると同時に、学生の課題への関心は高まった。ソフトでの表現に関しては実生活の体験をふまえ、安全・機能・衛生・慰安性等を考えさせながら個々に対応した。陥りやすい共通の問題についてはソフトの制作会社社員の説明を受けた。また学生同士で教え合うことも勧めた。
<結果>
多くの学生が知らず知らずのうちに住まいの設計にはまっていった。最初は操作上の得手不得手もあり、一方では生活上の願いがあふれ、まとまるかしら等の心配された学生もいたが、最後は各自固有の住まいや空間を3次元で表現することができた。二部生の最終回は自作の食空間を画面に映し出し、特徴をアピールした。学生全員が固有の住まい方の多様さに関心を示し、「楽しかった」と感想を述べた。ソフトへの関心の様子は男女によりやや異なりが見られた。
<考察>
3Dのソフトを利用することにより、住まいが身近なものになっていると実感できた。●生活を考えさせることができる●設備や家具の大きさと配置、使い勝手等について考えることができる●内装や家具等を好みの色やサイズに換えることができる●照明や配色、またエクステリアの空間まで自由に表現できる●平面計画したものをその場で3次元にかえ、ウォークスルーで室内を確かめることができる、などがこのソフトの特徴と考えられる。3Dソフトによる住まいの表現は平面図の指導では得られなかった住空間への広がりを学生は体験できたと思われる。また現場においても従来の方法より住居領域の指導の可能性を体験できると考えられる。
学校において3Dソフト導入の可能性があれば、住居領域の指導にとって極めて頼もしい教具といえよう。