抄録
【目的】
家庭科は,これまで家族関係や調理,被服など個人の家庭生活に関する内容が中心であった。今後の家庭科教育に更に必要なのは,社会との有機的な結びつきの中で豊かな家庭生活を営むために,社会に働きかける知識とスキルを養うことである。つまり「社会参画」を支援するような学習が必要になってくる。社会参画とは,一般市民が主体的に社会づくりに関わってゆく活動であるが,高校生にとって,社会参画とは発達課題であるだけでなく,成熟した社会をつくるという点でも必要不可欠なことだと考える。
ロジャー・ハート氏は「子どもの参画」について,「子どもの参画の梯子」という表現で社会参画度を8段階に分けている。「操り参画(1段目)」から,「子どもが主体的に取りかかり大人と一緒に決定する(8段目)」段階までである。この基本的な考え方を高校生にも援用し,高校生の社会参画を促す授業づくりを発展させていくことが期待される。
本研究では,高校生の社会参画という視点から,その意識と実態を質問紙調査によって明らかにし,社会参画を支援する授業づくりにおける有益な示唆を得たいと考える。
【方法】
千葉県の4つの公立高校に通う2年生,432名(男子179名,女子253名)を対象に,「高校生の社会への参加に対する意識」質問紙調査を行った。調査内容は,「社会参画意識(10項目)」,関連要因として「権利意識(5項目)」,「公益を受けている意識(5項目)」「ジェンダー意識(5項目)」,「進路意識(5項目)」,また家庭科の授業に関わる要因として、「生活文化の認識(27項目)」と「学習方法の認識(19項目)」,「高校生の社会参画意識(9項目)」である。調査時期は2010年3月である。
【結果】
「社会参画意識」について因子分析を行った結果,2つの因子が抽出され「社会参画への意欲(6項目)」と「社会参画への効力感(3項目)」とした。また高校生の社会参画意識に影響を与える家庭科の授業に関わる要素の「生活文化の認識」について因子分析をした結果,4因子が得られ,「生活文化への関心」,「人との交流への興味」,「生活モラルへの関心」,「地域活動への意欲」とした。また,「学習方法の認識」について因子分析をしたところ,4因子が抽出され,それぞれ「調べ学習への興味」,「協働学習への興味」,「問題解決への意欲」,「情報の発信と共有への興味」とした
高校生の社会参画意識に対して、関連要因がどのように影響を及ぼしているのかを明らかにするために,「社会参画意識」の下位尺度である「社会参画への意欲」,「社会参画への効力感」を,それぞれ従属変数として重回帰分析を行った。その結果,前者については,「生活文化への関心」,「人との交流への興味」,「調べ学習への興味」,「問題解決への意欲」が有意であり,後者については,「人との交流への興味」,「協働学習への興味」,「生活モラルへの関心」が有意であった。
【考察】
以上のことから,高校生の社会参画意識には家庭科の学習の要素として「生活文化への関心」,「人との交流への興味」,「生活モラルへの関心」,授業方法として「調べ学習への興味」,「問題解決への意欲」「協働学習への興味」が関連していることがわかった。