抄録
目的:
子どもたちにとって、超高齢社会での生き方、高齢者との関わりについて学ぶことの教育的意義は大きい。学校教育現場において、この教育的意義を果たすべく、2000年前後から学校教育における福祉教育の取り組みが盛んに行われた。具体的な内容として、高齢者と児童を対象にした世代間交流実践や、高齢者福祉施設、障害者福祉施設におけるボランティア活動に視点を当てた実践、点字や車いす等の障害者支援に関する内容等が挙げられる。しかし、こうした取り組みは、一過性のものとなる傾向が強く、継続的な実践例はほとんどみられず、福祉教育がブーム化している可能性があることが問題として指摘される。さらに、少子高齢化の進展や世代間にバリアが生じていることが指摘されおり、福祉教育実践の充実や、学校教育現場における世代間交流の必要性が叫ばれている。しかし、我が国の世代間交流分野における研究は、プログラム実践が先行しその評価方法までを見通した研究は少ない。さらに、プログラムの評価指標として、生化学的指標を用いた実践はみられない。そこで本研究では、まず、継続的な実践へ向け、地域に根ざした交流プログラムの開発を行った。次に、プログラム評価として、主観的評価指標に加え客観的な生化学的指標を用いることで、世代間交流プログラム実施前後における高齢者のストレス度を明らかにすることを試みた。
方法:
1 世代間交流プログラム実践
交流プログラムは、2008年に筆者が企画したプログラムの反省点や先行実践を踏まえ、昔遊びや、地域の文化財である伝統舞踊を取り入れた内容とした。交流対象は、新潟県上越市内のNPO法人が市の委託事業として運営する予防介護事業参加高齢者15名(82.7±2.6歳)及び、同区A小学校、B小学校の学童保育利用児童39名(1~5年生)とした。交流日時は、2009年8月4日、6日の2日間で、4日は高齢者9名とA小学校学童保育児童24名、6日は高齢者6名とB小学校学童保育児童15名が交流を行った。
2 世代間交流プログラム評価
ストレス度測定対象は、参加高齢者のみとし、同時に主観的指標として顔マークによる気分測定も実施した。精神的ストレス度を測定する生化学的指標として、唾液アミラーゼ(以下AMY)活性を測定した。(唾液アミラーゼモニター・二プロ社製)
3 高齢者健康体操時のストレス度評価
身体的ストレス度と精神的ストレス度とを区別するため、交流とは別日で高齢者のみで行われる健康体操実施前後におけるAMY活性値測定も実施し、世代間交流プログラム実施前後のデータとの比較を行った。実施対象は、世代間交流プログラムと対応のない予防介護事業参加高齢者10名で、測定日時は、2009年9月15日とした。なお、本研究における有意水準は、探索型研究に採用される「p<.15=有意傾向、p<.10以降を有意」とした。
結果:
1 世代間交流プログラム実践
参加者の感想から、昔遊びや、地域の文化財舞踊を取り入れたことを評価する記述が多くみられたが、交流会は、年に1度の行事的実践となった。しかし、交流の模様が地元紙に掲載されたり、地域の祭りで紹介されたことで、世代間交流を地域に発信することができた。
2 世代間交流プログラム評価
プログラム実施前後におけるAMY活性値測定の結果、参加高齢者のAMY活性値は、有意な上昇を示した(t(7)=-4.49、p<.01、Sig.)[対応のあるt検定]。また、顔マークによる主観的気分測定の結果、交流後の高齢者の主観的気分は、有意に向上する傾向を示した(3(3vs0)、p<.15、sig.)[サイン検定]。このことから、世代間交流に参加した高齢者は、有意に精神的ストレスを感じていながらも、それらは快ストレスではないかという可能性が示唆された。
3 高齢者健康体操時のストレス度評価
高齢者の健康体操時のAMY活性値測定の結果、AMY活性値は有意な減少を示したことから(t(9)=2.10、p<0.10、Sig.)[対応のあるt検定]、「結果2」のAMY活性の上昇は、身体運動に伴うものではなく、精神的なストレスによるものであるということが示された。