日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: B4-4
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口頭発表
家族支援から見た小児在宅医療における家庭科教員の果たす役割について
*吉野 真弓
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抄録
「目的」
現在「障がい者制度改革推進会議」では、障害者へのあらゆる差別を禁止する法案を制定するための協議がすでにはじめられている。この中で、障害のある子どもに関する教育福祉も議論がなされている。 これまで障害のある子どもにとって、本人や家族へのよりきめ細やかな医療の提供や発達への支援をするために「早期発見・早期治療」が大切とされてきた。しかしながら、その結果として、障害を持った子どもたちを地域社会から遠ざけ、とりわけ同年齢の子どもたちとともに学び育つ環境を失わせる結果にもつながってきた。 
今後、生まれたときから障害のあるなしにかかわらず、すべての子どもは、学校や地域社会でともにかかわりをもって生活していくインクルーシブな社会を目指している。このことは、現在特別支援学校に通っている、より重い障害を持った児童・生徒も、今後地域の学校に進学することはまちがいない。そのため教育現場においてこうした子どもたちを受け入れる体制を早急に整えていく必要がある。
学校教育における障害を持った子どもの問題は、広く学校全体で取り組んで行くべき問題である。これらの学校での取り組みは、その子の教育に限られるものではない。さらに一歩踏み込んだ、その障害児の生活や家族全体への支援を含めた問題は、家庭科教員こそがまさに担うべき役割である。そのため家庭科教員は重度の障害を持った家族に焦点を当てた研究を、今後家庭科教員もさらに考えていかなくてはならない問題である。現在こうした子どものケアは主に親が行っており、その身近に接している相手が訪問看護師である。それゆえ家族とのコミュニケーションのあり方を訪問看護師から学ぶべきところが多い。
そこで本研究では、小児在宅医療を受けている家族の現状と問題点を明らかにするとともに、学校教育において重症障害児に対する家庭科教員の果たす役割を明らかにすることを目的とする。
「方法」
調査は、家族に一番接している訪問看護師を対象とし、T県すべての訪問看護ステーションにアンケート調査を行った。調査実施時期は、2007年5月である。活動中の訪問看護ステーションは57ヶ所であった。アンケートに対し、55ヶ所から返答があり、回収率は、96.5 %であった。また、協力の得られなかった2ヶ所のステーションに対しては電話にて調査を行い、どちらも小児の訪問看護を行っていないことを確認した。
「結果および考察」
結果として明らかとなった小児在宅医療の現状は、第1点目として、在宅で医療的ケアを必要とする子どもを育てていくことは、家族にとって肉体的、精神的にも負担であり、家族を非常に疲弊させている。第2点目は小児在宅医療をしていく上で大切なことは、現在から将来に渡っての家族や患児の不安や悩みの相談にのるなど、患児だけでなく家族とのかかわりを大切にすることが重要であることが示された。第3点目は、今後小児の在宅医療が広がるための支援として必要なことは、社会および行政による家族を支えるシステムづくりが重要であることが明らかとなった。このように在宅医療を必要とする重度の障害児の家庭生活を支援するには、家族全体を支援することが必要不可欠であり、家庭科としても重要な問題である。今後ますます、多くの重症な障害を持った子どもたちが小学校や中学校に入学する方向に向かうと考えられる。その時家庭科教員は、学校と家庭・および医療機関、社会福祉士などと連携して子どもの学校生活および家庭生活を支援する中心的な役割を積極的に果たしていくことが重要である。
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© 2010 日本家庭科教育学会
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